研究課題/領域番号 |
24530024
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
深澤 龍一郎 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (50362546)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 行政争訟 / 行政法 / 公法 |
研究概要 |
本年度は、行政争訟制度が有する行政統制機能に関する実証的研究についてのイギリス、オーストラリア、アメリカ等の諸外国の文献を収集し、その研究方法および研究結果を分析した。その結果として、裁判所の判決のインパクトに関する研究は、主として、アメリカにおいては政治学の領域において実施されてきたのに対し、イギリスおよびオーストラリア(より一般的に言えば、イギリス連邦およびヨーロッパ)においては法社会学や行政法学の領域において実施されてきたことが明らかになった。また、イギリスの司法審査は規則制定活動よりも個別具体的な意思決定を対象としたものであるため、それに応じて、イギリスの研究は一般的にアメリカの研究よりも焦点が狭くなっていること、しかし他方で、イギリスにおいては、司法審査は独立した事象としてではなく一連の措置として捉えるべきであること、司法審査が政府の官僚機構に対して積極的な影響を及ぼしうるということについては一般的に懐疑的であること、いくつかの研究によれば司法審査が潜在的に消極的な効果を有するとされていること、等が指摘されていることが明らかとなった。さらに、オーストラリアにおいては、司法審査の判決について、3つの問題--第1に、当該事件は裁判所の判決に従って再検討されたかどうか、第2に、そのように再検討されたとすれば、最終的な結果はどうであったか、第3に、その判決によって法ないし行政機関の実務に変化が生じたかどうか--を長期間にわたって調査した研究があり、大きな成果をあげていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、行政争訟制度が現実に果たしている行政統制機能を実証的に分析し、行政争訟制度が行政活動に対して及ぼすインパクトを解明しようとするものである。この目的を達成するためには、まずは、こうした研究が進展している諸外国(具体的には、イギリス、オーストラリア、アメリカ合衆国等)の先行業績を収集して分析する必要があるが、本年度は先行業績の収集および分析をおおむね順調に進めることができたと評価することができる。
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今後の研究の推進方策 |
今後も当面の間は、行政争訟制度が有する行政統制機能に関する実証的研究についての諸外国の先行業績を収集して分析を行う予定である。このような文献調査がさらに進展し、おおむね完了したといってよい程度にまで達した段階で、イギリスおよびオーストラリアの研究者に聞き取り調査を実施し、それまでの疑問点を解消するとともに、その後にわが国において行政争訟制度が有する行政統制機能に関する実証的研究を遂行するうえでの助言を求めることにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
購入予定の図書(洋書)の刊行が遅れたため、その分の研究費を次年度に繰り越したが、当該図書が刊行され次第、使用する予定である。
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