2014年度は、前年度に引き続き、日本の放送法制における法的規制と自主規制の相互関係についての研究をドイツとの比較を通じて行い、「放送法における表現の自由と知る権利」を編著『憲法の規範力とメディア法』に寄稿した(信山社、2015年3月刊行)。この論文は、放送事業者の表現の自由と視聴者の知る権利が放送法にどのように反映されているかという観点から日独を比較したものである。両国では放送によって提供される意見や情報は多様であるべきだと考えられているが、ドイツでは意見多様性を法的規律によって確保すべきという憲法判例が蓄積されているのに対し、日本では放送事業者の表現の自由について憲法の観点から議論されることはあっても、情報多様性の確保は政策上の課題であり、憲法問題として捉えられることは少ない。日本の放送法は、情報多様性や正確さの確保を放送事業者の自主規制に委ねており、それを促すため法的規律を行っている(規律された自主規制)。この論文は、そのような日独の放送法に対する考え方や制度の違いを明らかにした。 また、「公共放送の内部監督機関の委員構成と放送の自由」という論文を慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所の紀要65号に寄稿した(2015年3月刊行)。ドイツでは、公共放送の組織内部に監督機関として放送委員会が設置されており、様々な社会集団の代表がその委員となっている。2014年3月、その委員に国家や政党の代表が多数含まれていることが放送の自由に違反するの違憲判決が下された。この論文ではこの判決を検討した。また、ドイツの放送負担金制度についても引き続き調査研究を進めた。 この他にも、番組編集準則の問題点を解説する論文を月刊「Journalism」編集部から依頼され執筆した。日本の法制の実態を把握するため、東京にて通信放送法制の動向について様々な関係者からのヒアリングも行った。
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