研究課題/領域番号 |
24530027
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
植松 健一 立命館大学, 法学部, 准教授 (90359878)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 民主主義への不信 / たたかう民主制 / 議会立法と有権者 |
研究概要 |
市民の「安心感」の維持向上を目的とした立法のあり方を分析するため、さしあたり、ドイツの現状分析を中心に、資料の収集に力を入れた。 具体的には、①ドイツで近年問題になっている、極右政党・政治団体の禁止・規制と、その前提となる公安機関(連邦憲法擁護庁)の活動をめぐる動きを、その背景と法的問題に的を絞りながら、文献の収集と分析につとめた。そのような作業を通じて、ドイツ特有の「たたかう民主主義」から一方では正当化されるとしても、しかし同時に憲法上の他の諸原理や基本権との緊張関係が生じる諸立法の存在構造の一端を明らかにする作業を行った。 ②ドイツで生じている「民主主義」への不信感、とりわけ議会制というシステムへの不満を背景とした諸現象を憲法的観点から把握することにつとめた。その具体的な素材としては、②-(a):いわゆる「阻止条項」や「超過議席」といったドイツ特有の選挙制度の一部が憲法裁判所によって違憲判断をうけるような状況の中で、伝統的なドイツの選挙制度観が変容しつつあることを、判例動向から探った。②-(b):シュトッツガルト駅前の再開発プロジェクトへの市民の大規模な反対運動やそれに伴う州民請願・州民投票などの状況を憲法的・政治学的に論じた文献を読み、議会の「立法」と直接制を取り込んだ「立法」との関係を解明しようとした。 これらの成果の一部は、立命館大学公法研究会(2012年10月19日)での研究報告「ドイツにおけるたたかう民主制の実相」として発信した。 また、これらの作業とは直接関係ないものの、やはり民主主義の問題の関心から、研究代表者の関心であった「ポピュリズム」に関する論考を読み、日本の文脈に即した小稿を発表している(植松健一「『既得権益』と『マネジメント』-憲法政治として診た橋下型ポピュリズム」労働法律旬報1769号、2012年6月、pp.27‐34)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
採択年度である平成24年度から島根大から立命館大に所属研究機関が変わるという研究環境の変化から、一定の研究計画上の方針変更を余儀なくされた。すなわち文献収集の点で当面は国内・海外出張の必要性が相対的に減じたため、その分を図書を中心とする物品購入により、研究目的の基盤を固める作業に重点を置いた。 新たな研究環境は、大学の研究蔵書などの多さ、専門的な研究者が身近に多いことなど、多くの点で多くの利点をもたらすことになった。しかし、新たな研究・教育環境になれるまでに時間を要し、とりわけ年度前半においては、その点が顕著であり、研究の着手が遅れてしまった。本来であれば、今年度、研究課題にかかるドイツの現状を分析した論文の公表を目指していたが、実現できなかった。 しかし、それは単年度における外在的な要因であって、総体としては良好な環境状況は、25年度以降の研究の本格的発展に資するものと考えている。すでに手元には、多くの資料が集まっており、これらを年度末の2月から3月にかけて、ある程度、読解・整理することができた。25年度は、さらに本格的な分析を行うことによってすることによって、今後は遅れを挽回することができるのみか、計画以上の成果も期待できよう。
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今後の研究の推進方策 |
文献については、24年度にある程度体系的な渉猟ができたので、これらを本格的に分析し、①自分の評価を加えた上で、発信のていくとともに、②25年度中のドイツ連邦共和国での海外調査(7日程度の行程)を実施する。 ①については、学内紀要または何らかの媒体を通じて、序説的な論考を公表したいと考えている。 ②については、当初は研究代表者の従来の交流関係からビーレフェルト大学を予定していたが、現在の所属研究機関においては連携の深いフライブルク大またはミュンヘン大学での調査が、より効率的であると考え、調整中である。
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次年度の研究費の使用計画 |
海外調査を実施する場合は、旅費が多くの割合(予定では40万円)を占めることになる。円高等の影響も踏まえながら、費用対効果上、効率的な調査・資料収集につとめたい。 その他は、引き続き、文献を中心とした資料購入に当てられる。 研究成果を公表する場合は、抜き刷り印刷・郵送費用も支出したいが、実際の公刊時期などを踏まえて判断したい。
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