研究課題/領域番号 |
24530027
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
植松 健一 立命館大学, 法学部, 教授 (90359878)
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キーワード | 民主主義への不信 / たたかう民主制 / 政党の変容 / 議会立法と直接立法 |
研究概要 |
平成24年度に引き続き、立法の「象徴化」現象につき、ドイツの議論状況につき文献を手掛かりに調査した。とくに平成25年度は、立法過程の制度的・動態的分析に軸足を置いた。あわせて、右作業により獲得した知見を参考に、日本における時事的な立法状況につき、検証する作業を行った。 ①近年のドイツでは、従来から定着していた選挙制度のいくつかの部分について(連邦議会における「負の投票」、超過議席、欧州議会における3%阻止条項などに関して連邦憲法裁判所がいくつかの重要な判断を下している。これらの諸判決の背景と論理構造を分析しながら、そうした選挙制度にも規定されつつ、かつ近時の社会的状況の変動により構造変容を来しつつあるドイツの政党の状況にも目を向けた。この成果の一部は、2014年全国憲法研究会秋季研究報告での報告というかたちで発信される予定である。 ②日本の時局的状況を意識しつつ、本研究課題の軸である「象徴的立法」の一側面として、情報保全法制に着目した。すなわち、ドイツにおける秘密保護法制の法的枠組みと運用状況を調査し、これまで日本で紹介されてきたようなドイツ刑法93条を中心とした刑罰による情報保全は相当程度名目化=「象徴化」し、むしろ公務員の守秘義務違反容疑を理由とした捜査・押収や、日本の適性評価に相当する保安審査のような手法が実働的な情報保全の機能を果たしていることを確認した。また、ドイツにおいて政府の秘密保持に対する議会のコントロールがどの程度実効的なものかについても、連邦議会の統制委員会の法的枠組みや運用を検討することで、一定の知見を獲得した。この成果の一部は、「諸外国は国家の秘密と市民の自由にどう向き合っているか:ドイツ」田島泰彦・清水勉編『秘密保全法批判』(日本評論社・2013年)所収191-198頁、で公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、平成25年度中に紀要論文の公表を予定していたことからすれば、この点での目標達成はできていない。しかし、平成26年度の成果も含めた論攷のまとめ自体は、とくに各論的論点(闘う民主制にもとづく公安活動、秘密保全法制、選挙制度など)についてはそれなりに進捗しており、その限りでは順調と評しうる。 ただし、「立法の象徴化」研究という総論的課題については、社会学的・政治学的な知見に基づく考察の必要が大きく、平成25年度の研究では、なお全体像を描くようなまとめに至っていない。平成26年度は、この点を意識しつつ研究をまとめていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
文献については、邦語文献については必要なものについて概ね渉猟できた。平成26年度はドイツ語文献および関連する英語文献の渉猟および読解に力を入れる。 本課題に関連するテーマでの学会報告および出版の分担執筆も予定されているので、こうした機会を最大に利用して、研究成果を発信していく。 学内業務との関係で平成25年度に実施できなかったドイツ連邦共和国での海外調査を平成27年2月に実施する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
発注していた洋書が、品切れのため購入できないものがあり、執行に差額が生じた。 次年度使用額の物品費(洋書購入分)に充当し、当初予定とは別の書籍を購入することで当初の計画の趣旨に沿いかつ、円滑な研究遂行に資する使用を行う。
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