平成25年度までは、市民の「安心感」の維持向上を目的とした立法の存在構造という視点から、いくつかの法現象(ドイツにおける治安情報機関による議員の監視、日本においては特定秘密保護法の制定過程など)を個別に検討してきた。 平成26年度は、今日の市民=有権者が、議会を通じた立法というルートに対して抱く「不信感」の背景事情を探るため、ドイツにおける政党不信・政治不信と選挙制度改革論の実相と論理について、ドイツ連邦憲法裁判所の関連判例の考察を中心に整理をした。こうした作業を通じて、従来の憲法学が描いてきたドイツの民主政像(とりわけ「たたかう民主制」像)とはやや異なる今日的な態様も確認できた。また、ドイツの民主政についての近時の「病理現象」の一端を描くことで、日本を含めた各国に共通の問題とそれに対する処方箋を検討する手がかりを得ることができた。 これらの成果の一部を、全国憲法研究会2014年度秋季総会(10月)、関西憲法判例研究会例会(9月)など、いくつかの研究会の場において報告した。また、近刊の「ドイツの民主政における阻止条項の現在(1)(2・完)」立命館法学359号(2015年6月刊行予定)・同360号(同8月刊行予定)も、この研究成果の一部である。 研究期間全体の成果という点では、年度ごとの個別課題については一定の整理ができたものの、それを基礎として本課題全体の方向性を示す作業がなお十分に完了しておらず、課題として残されている。この点は、早急に整理し直した上で、2015年度内に成果として公表したいと考えている。
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