本研究は、EU諸国における外国人の退去強制に関する法制度とその運用について、これまでの応募者の研究成果を踏まえて人権保障の視点から日米との比較をおこない、わが国の新しい出入国管理制度への提言をおこなうことを目的とした。比較法的研究のための対象国は、EU諸国、アメリカおよび日本で実証的な研究・調査・分析を実施していった。わが国においては、個々の領域においてEU法が国内法化しつつある現状が十分紹介されていないため、退去強制に関する先駆的な研究を心掛けていった。 その具体的な方法としては、これまで積み重ねてきた日米の比較法的研究の知見を基礎として、つぎのような4つを柱として進めていった。①EU本部が公式に発表する書簡、海外の文献、国内の文献等についての文献調査・分析をおこなった。②ヨーロッパおよびアメリカにおける海外調査(大学等の研究機関における調査、実務家への聞き取り調査等)による情報収集と意見交換をおこなった。③国内における情報収集と意見交換(学会および研究会への出席、実務家への聞き取り調査等)、④本務校の紀要にこれらの研究成果を発表することが出来た。 研究成果の意義として、これまでの研究の上に新たにEU法の比較法研究を積み上げていくことが出来たのとともに、とくにヨーロッパにおける文献および情報の収集との研究者・実務家との新しい学術ネットワークを構築することができたことが挙げられる。 また、本研究期間中にヨーロッパで発生した外国人が関与するテロリズムと難民の問題に接し、それが国際社会における喫緊の共通課題であることからも、EU諸国の移民法(出入国管理法)が今後どのように対処するかについて、さらに研究を進展させていく契機(新たな研究課題)となった。
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