研究課題/領域番号 |
24530037
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
中山 茂樹 京都産業大学, 法務研究科, 教授 (00320250)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 憲法 / 学問の自由 / 臨床研究 / 生命倫理 / 倫理審査 / 再生医療 |
研究実績の概要 |
「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」(平成25年法律85号。以下、「新法」という)の憲法的評価について次のような知見を得た。 憲法上、自由を規制する立法は、「唯一の立法機関」(憲法41条)である国会が定立し、正当な目的を有し、その目的達成に適した必要かつ合理的な規制手段をとる必要がある。しかし、新法は規制目的が不明確であり、どのような再生医療等であれば許される/許されないのかという規制政策の基本的考え方を法律から読み取ることが難しい。そのため、新法は、国会がなすべきであり行政機関ができないはずの基本的な政策判断を、省令(再生医療等提供基準)にゆだねている可能性がある。そのような違憲となる法律解釈を避けようとすると、法律の趣旨・目的や規制内容を限定して解釈する必要がある。 新法は、臨床研究の被験者保護を目的とした研究倫理審査規制を含むものかもしれない(それは不明確であり、それ自体問題である)。大臣ではなく委員会の審査手続を設けていることはそれを示唆する。けれども、なぜ再生医療等のみに研究倫理審査が要求されるのかを説明しにくく、また研究の性格を有さない診療は区別されるはずである。 さらに、第一種再生医療等の提供について、厚生労働大臣が研究倫理審査の権限を有するとすれば、憲法上の学問の自由の保障に反する。厚生科学審議会を学問的組織としての倫理審査委員会と捉えることが可能かもしれないが、そうだとすれば、審議会の判断に大臣は法的に拘束されると解する必要があろう。研究倫理審査は、研究の情報的価値の評価を含む憲法上特殊な規制基準を用いるものであり(第一次的には学問共同体の自律的規律としてなされるべきものである)、それを法的な事前審査に採用することは、本来、法律に明示すべきである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
再生医療等安全性確保法を題材にして、憲法上の学問の自由の保障に関する考察をおこなっており、研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
再生医療等安全性確保法が制定・施行されたこと、また研究不正問題への対応が政策課題となっていることから、日本での状況の分析・対応に重点を置いて研究成果を実質化することとしたい。
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