研究課題/領域番号 |
24530038
|
研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
辻 美枝 関西大学, 商学部, 准教授 (00440917)
|
キーワード | 保険 / 再保険 / 連邦消費税 / 租税法 |
研究概要 |
平成25年度は、国境を跨ぐ保険(再保険)事業への所得課税の問題を分析するため、主として、米国における再保険料に係るexcise tax(以下、「連邦消費税」という。)を中心に研究を行った。連邦消費税は、保険会社の所得課税の特例(所得課税の補完)であり、米国再保険会社が、外国の再保険会社と比べて競争上不利にならないよう政策として導入された。わが国では、このような所得課税を補完するような課税制度は存在しない。本研究の契機となったファイナイト再保険事件(東京高裁平成22年5月27日判決)におけるわが国の課税権の限界への対処の一方策として、連邦消費税を検討した。連邦消費税は、米国に所在するリスクに係る保険料が外国保険会社(再保険会社)に支払われる都度課税されるため、当該リスクに付保することから生じるすべての所得に対して、米国に第一次課税権を保証するものである。米国外の保険会社がさらに米国外の保険会社に再保険する場合にも連邦消費税の対象となる。 このような米国の国外に流出する保険所得への積極的な課税態度は参考になる。一方で、連邦消費税は国外の保険会社(再保険会社)間での再保険取引についても米国が課税を行うため、米国の課税主権を超えて課税することになり、結果として再保険コストが上昇し、米国保険会社に不利益となるとの指摘もされている。 米国は、これとは別に、被支配外国保険会社の保険所得につき米国所在関連会社に課税する規定(CFC税制)を有している。平成25年8月に参加したInternational Fiscal Associationの年次総会(コペンハーゲン)の主要議題の一つが、Taxation of Foreign Passive Income of Groups of Companiesであり、そこでの議論から本研究課題に有益な示唆を得ることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度および研究最終年度である平成26年度は、本研究課題の第二段階として、再保険取引とキャプティブ保険取引の国内税法上および国際課税上の論点整理と問題分析を行うことを目的としている。平成25年度は、「研究実績の概要」で触れたように、この問題に関する各国の対応からわが国への示唆を得るべく、米国の連邦消費税制度およびCFC税制を中心に分析を行い、租税条約上の関連規定(日米租税条約27条徴収共助、議定書による連邦消費税免除を含む)についても大枠で捉えることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度は研究最終年度であるため、平成24年度および平成25年度の研究過程において入手した文献・資料等について丹念に分析・検討を行い、本研究課題であるリスク移転に伴う法人所得課税上の問題の解決に向けて、研究内容を収斂していく。平成26年度も引き続き、国内外の図書館・研究機関および各種データベースを有効に活用し、文献・資料収集に努める。研究期間を通じて、国際課税に造詣の深い村井正関西大学名誉教授、宮本十至子立命館大学教授と常に意見交換を行う。 10月に開催されるInternational Fiscal Associationの年次総会(ムンバイ)に参加し、本研究課題に関連する国際課税の最新情報を入手するとともに、各国の租税法研究者と意見交換を行う予定である。 最終報告をまとめるにあたって、租税法研究会において報告を行い、そこでのディスカッションを踏まえて、最終的に成果論文をまとめる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
文献・資料の整理・分析のための研究補助として人件費の支出を予定していたが、平成25年度においては支出を要しなかった。そのため、次年度使用額が生じた。 平成26年度は研究最終年度であるので、これまでに収集した相当数の文献・資料の整理と分析のための研究補助人件費として使用する予定である。
|