最終年度は、次の研究成果を上げることができた。 (1)論文「韓国における子どもの貧困政策の法的検討」(大阪経大論集66巻4号pp45-70、単著、査読なし)。筆者は、韓国低所得世帯教育支援法制の研究を進めていくうちに、韓国子どもの貧困政策の概要をまとめる必要を感じた。そこで先行研究を調査してみたところ、日本ではほとんど韓国の制度・政策が紹介されていないことがわかった。そこで、入手した政府系研究機関の報告書をもとに、上の研究論文を公表した。韓国では、給付方法については、現金給付と現物(サービス)給付の双方バランスを考えた制度設計が行われていること、給付対象については、対象を限定する政策と対象を限定しない普遍的な政策のどちらが優れているかが検討されていることをあきらかにした。そして、給付方法については、どちらが優れているということはなく、双方の充実が望まれること、給付対象については、今後は、すこしずつ普遍的な方向に向かうのではないかと考えられることを指摘した。 (2)研究報告「教育と福祉の交錯ー学校給食費公会計化論の検討ー」(福祉権理論研究会、2015年12月5日、於・早稲田大学)。近年、日本では、学校給食費未納問題を解決するために、学校給食費会計を公会計化するべきとの議論がある。しかし、このような議論は、未納世帯からの徴収を行いやすくすることが目的となっており、学校給食の、子どもの食育・栄養改善をはかるという目的を没却した、きわめて倒錯した議論であることを、公会計化推進論の検討、給食費未納問題の現状の検討から明確にした。 (3)研究成果の社会への還元「Knowledge Cafe」(2015年10月22日、於・紀伊国屋書店グランフロント店、主催・大阪経済大学)。本研究の成果を社会に還元するため「Knowledge Cafe」と題する講演会を行った。学校給食費未納問題や韓国の学校給食の現状などを話し、市民と質疑応答を行った。
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