研究課題/領域番号 |
24530041
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
野田 崇 関西学院大学, 法学部, 教授 (00351437)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 調達制度 / 契約締結能力 / ドイツ |
研究概要 |
本年度は、途中から在外研究に従事したこともあり、研究課題にかかる研究の進行は若干の遅れを生じた。 日本法については、拙稿「行政による調査・指導・規制と法人情報の情報公開」『現代行政法講座第4巻』(日本評論社、近日刊行予定)において、調達制度には直接は触れていないものの、調達制度において決定的な意味をもつ法人情報の取り扱いについて若干の検討を加えた。情報公開法は行政保有情報の原則的開示を定めているが、最高裁判例を検討したところ、法人情報のうち当該法人自体の活動に関する情報については、開示に抑制的とも読み取りうる判例がみられた。 ドイツ法については、ドイツ滞在中に資料収集を行った。現在進行中の立法に関する資料や、それに関する雑誌論文等を中心に収集し、若干の検討を行った。現在の立法の動きは、本研究課題の中心ではないが、次年度以降に取りまとめる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的は、国・地方公共団体による政府契約(売買契約や請負契約など)の締結が、それらが法人として当然に有するとされている能力に基づくものではないという認識を前提としつつ、国等の契約締結能力の根拠を明らかにすることであり、初年度である平成24年度については、そのための前提作業として、日本の調達制度に関する認識を深めること、および比較法研究の対象であるドイツの政府契約制度に関する資料収集を計画していた。 本年度は年度途中からドイツにて在外研究に従事したため、日本法に関しては資料面の制約から、ほとんど着手することができなかった。ドイツ法に関する資料収集は行うことができた。ドイツの調達制度は、特に1990年代末以降、欧州共同体法に強く規定されており、ドイツ法としての課題は欧州共同体法の国内法化である。また、欧州共同体法上の調達制度の目的は、調達制度の共通化と無差別参加の促進を通じた、共同体内部での競争促進であり、共通化の波は軍事調達にまで及んできている。他方で、各加盟国政府は、とりわけ国内中小企業の保護を求めている。これら二つの要請のバランスをいかに取るかが現下の欧州共同体法の課題であるが、国内法の解釈問題としても、これら二つの政策目的のいずれを重視するかで、立場の別れが存在している。本年度は、近年ますます急速に進展している欧州共同体法の調達法制を把握し、ドイツでの国内法化の流れを追うことに終始した。しかしながら、研究課題との関係では、むしろ国家が締結する私法上の契約の基礎理論が重要である。この点については、本年度は端緒的な資料収集に終わらざるを得なかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の7月末にドイツでの在外研究を終了し帰国予定である。平成25年度の課題は、第一に、ドイツで収集した資料の整理である。現在進行中の立法過程への目配りに配慮しつつ、本研究課題との関係では、むしろ、欧州共同体法の影響を受ける以前の理論状況が重要となろう。また平成25年度は、平成24年度に実施予定であった日本法の状況の正確かつ包括的な整理が課題となる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は年度途中からボン大学(ドイツ)において在外研究に従事したが、渡航費用は所属研究機関が負担したため、本来予定していたドイツでの資料収集にかかる旅費の一部が発生しなかった。また、ドイツに滞在中であった平成24年度後半は、ボン大学法学部図書館での資料収集と読解に専念したため、書籍購入はほとんど行わなかった。そのため繰越金が発生した。 平成25年度は、情報収集、整理の用に供するためにデスクトップ・コンピュータを購入する予定である。また、平成24年度に引き続きドイツでの資料収集を実施する予定である。また国内での資料収集のために郵送料、コピー代が発生する。
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