研究課題/領域番号 |
24530041
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
野田 崇 関西学院大学, 法学部, 教授 (00351437)
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キーワード | 政府調達 / 政策目的の追求 / 欧州共通市場 |
研究概要 |
平成25年度は7月末までドイツ連邦共和国・ボン大学にて在外研究に従事していた。その間に資料収集を行ったほか、ボン大学法学部公法講座ゲルディッツ教授にインタビューを行った。 資料に関しては、政府調達法に関するコンメンタールを収集したほか、現在も変化しつつあるEU法に調査した。EU委員会は従来から、欧州共通市場内の実現を最重要の目的に位置づけ、政府調達についても自由な参入の確保を最上位の目的としてきた。それに対して各加盟国政府は、政府調達を地域振興等の(自由競争の確保とは別の)政策目的を実現する手段として利用し続け、この点にEU委員会と各加盟国政府の対立点があった。この対立は、2000年代後半からEU委員会が政府調達における政策目的の考慮を一定の範囲内で許容するようになったことで緩和された。しかしながら、2010年に発生した欧州通貨危機をきっかけに、再度、国の財政健全性を重視した改革に取り組む機運が高まっている。例えば、伝統的に国民経済における政府の役割を重視してきたフランスにおいても、経済面での自由主義的な改革の必要性が指摘されるようになっている。この様な動きが政府調達制度に如何なる影響を及ぼすのか(あるいは及ぼさないのか)は現時点では判断できないが、一つ言えるのは、政府調達制度の在り方がその時々の経済状況及び政治状況によって強く規定されていることである。 ゲルディッツ教授へのインタビューにおいても、政府調達法研究の中心は現行制度の認識であるとされ、政府調達を利用した政策目的追求の許容性については、本来の調達目的によってどこまでカバーされるかの問題であるとされた。 以上によれば、現在のドイツでは調達制度についての基礎理論的な考察はもはや一般的ではなく、複雑な現行制度の認識・解釈が中心であり、本研究の目的のためにはより古い時代に焦点を合わせる必要があることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度は7月末までドイツ連邦共和国・ボン大学法学部において在外研究に従事していた。そのため、ドイツ・EUの制度調査は行うことができたが、平成24年度の研究計画のうち、日本法に係る部分に遅れが生じた。平成25年度8月以降は日本にいたが、ドイツでの収集資料の整理・検討が中心であったため、歴史的発展を含めた日本法の検討が不十分である。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、第一に、ドイツでの収集資料の整理検討を進めるとともに、2010年以降の欧州通貨危機がEU法上の政府調達法に如何なる影響を与えているか(または与えていないか)を調査する。平成24年8月から平成25年7月までのドイツ滞在期間中は、いまだ危機が進行中であったので、その影響は今後現れてくるものと思われる。 また、日本における最近の議論はすでに論文として公表しているので、戦前の議論を見たうえで、ドイツの古典的学説を検討する。 したがって、平成26年度はドイツ法における古典的学説から比較的最近までの議論について概観を得ることが目標となる。
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