研究課題/領域番号 |
24530041
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
野田 崇 関西学院大学, 法学部, 教授 (00351437)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 公法上の契約 / 規範授権説 |
研究実績の概要 |
今年度は、ドイツの古典的な行政法学説における契約の位置づけについて検討を行った。オットー・マイヤーは、その公法性質論のコロラリーとして、公法における契約の可能性を否定した。この、当時にあっても反時代的な主張は、その後直ちに批判されることとなる。しかし、ここでの批判論は、国家と私人とが支配従属関係にある公法関係において契約は存在し得ないというオットー・マイヤーのテーゼを否定するものではなく、ただ、法律の授権ある場合にのみ契約の締結を可能とするものであった(公法契約の可能と不自由)。このような譲許は、1950年代末に、法律の授権がなくても公法契約の締結を可能とする学説(公法契約の自由性)の登場により打破され、1973年制定の行政手続法において行政契約に関する規定が置かれるに至る。しかし、公法契約の自由性を承認する学説は、その現実的必要性に立脚しており、公法契約の自由性の理論的根拠を明らかにしているわけではなかった。そのため、今日でもなお、契約が実務上は広く用いられている一方で、行政手続法54条以下の行政契約に関する規定を根拠として契約を締結し得るのか、それとも、個別法上の根拠がなお必要であるのか、理論的にはっきりしない状況が続いている。さらに、契約が当事者間の個別的な規範制定である点に着目し、そのような行政の行為形式が、議会による民主的立法と対立し得ることも指摘されている。 今年度は、以上の成果を論文にまとめた。来年度中に出版予定の書籍に掲載予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度の研究計画であった、ドイツの古典的学説の検討は行った。それに対して、現在の欧州・ドイツの政府契約制度については、制度改正が頻繁に行われていることもあり、調査検討がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、本研究課題の最終年度である。そこで、公法契約に関する古典的学説の検討をさらに進め、「契約を締結する国家」と民主政原理との間に矛盾抵触が生じる可能性を検討する。その検討を前提として、政府契約において、政府が契約締結資格ないし契約条件として多様な政策的目的を追求している現象の法的解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題においてはドイツでの資料収集を予定しているが、ドイツへの私的旅行において資料収集を行ったため、研究費としての旅費が発生しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の研究のための資料購入に充てる予定である。
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