民法上の契約制度は、契約当事者間の合意に法的効力を認め、当事者の意思による自治を承認するものであるが、民主政国家における行政活動は国民代表の意思決定(法律)に従う必要がある。そのため、行政と私人の契約にあっては、個別具体の意思と、国民代表の意思(法律)とが抵触し得る。行政手続法54条の一般的な授権規定と個別行政法規とがあいまって、契約による行政活動の規範的正統性を根拠づけるドイツ法と異なり、そのような一般的授権規定を欠く日本では、第一に、個別具体の問題解決を志向する契約に対して、法律社会共通の問題を共有可能な形で定式化し、妥協的に問題解決を図っていること、及び法律の可変性を考慮すべきである。
|