研究課題/領域番号 |
24530045
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
浅田 正彦 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (90192939)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 国際法 / 国連 / 集団安全保障 / 経済制裁 / 実効性 / 安保理決議 / 人権 |
研究概要 |
平成24年度は、国連による経済制裁の実効性確保に関する研究の前提作業として、国際連盟期の経済制裁の制度的枠組みとその実践過程を考察すると共に、国連の経済制裁の制度的枠組みとその初期の実践過程をも考察し、両者を比較検討した。 連盟期の経済制裁の実践は、イタリアのエチオピア侵略を対象とした一件しかなく、比較対象するには十分とはいえないものの、集団安全保障の初期段階ともいえる連盟期における制裁の特徴をよく表している。類似の事態が他に存在したにもかからわらず、制裁対象となった事態は選択的に選定されるとともに、連盟総会による「連盟規約第16条適用の指針」の採択もあって、連盟国の制裁への参加も実質的には任意とされ、執られる措置も段階的に強化される形をとった。その結果、制裁対象国と経済的に緊密な関係にある国の中にはそもそも制裁に参加しない国もあったし、重要な戦略物資が制裁から除外されるということもあったが、それらは想定内のことであった。こうして連盟期の経済制裁は限定的な形で行われたにすぎず、全体として失敗であったとの評価がなされることになる。 これに対して、国連の下においては集団安全保障が全体として集権化され、少なくとも当初の発想としては、制裁への参加は基本的にすべての国連加盟国の義務とされた。しかし、国連においても初期の段階における経済制裁は「要請」の形、すなわち義務的ではない形で実施され、義務的な制裁はほとんど行われなかった。また、制裁の内容についても、武器禁輸を中心とした限定的なものにとどまった。その結果、多くの制裁において実効的な措置が取られていたとはいえない。こうして、少なくとも制度上は国際連盟の下における経済制裁の制度と国連の下におけるそれとは大きく異なるにもかかわらず、初期の国連の実践においては連盟期とはさほど異ならない実践が行われていたことが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画通りに進行している。初年度は文献研究を中心とした歴史研究であり、必要な資料、書籍類の入手も比較的容易であったことから、現段階では翌年度以降の研究計画を変更する必要性は特に感じられない。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に実施した研究においては、国際連盟期における経済制裁と初期国連における経済制裁との間には、制度的には大きな違いがあったにもかかわらず、現実の実践においては、両者の間に本質的な相違はないことが判明した。こういった国連における初期の経済制裁の実践からの転機となったのが冷戦終結後に発生した湾岸危機である。平成25年度および平成26年度は、ポスト冷戦期の経済制裁の実践に焦点を当て、その多様な実践を編年的な観点と機能的な観点の双方から分析し、その特徴と問題点の洗い出しを行う。問題点については、経済制裁の目的達成上の問題点と国際法上の問題点とに分け、それぞれを独立に、しかし有機的に関連させながら検討を進めていく。国連の文書を中心とした資料分析とともに、必要に応じて国連関係者や専門家へのインタビューも行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし。
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