研究課題/領域番号 |
24530048
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
柴田 明穂 神戸大学, 国際協力研究科, 教授 (00273954)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際法学 / 条約 / 国際環境法 / 合意 |
研究概要 |
本研究は、時の流れと共に変わりうる国際社会における利害関係や各国の選好、更には国際世論や価値観に条約体制が内発的に適合しその規律方法や対象を変容させていくダイナミックなプロセスを国際法的に根拠づける理論的支柱として、実質的・共同体的・プロセス的な「条約体制内合意」という概念を提示し、その成立背景や条件を提示することを目的に行われている。 H24年度の研究は、まず国連国際法委員会(ILC)の「時間の経過と条約」の議論をジュネーブに出張して直接傍聴し(本議題は2012年までスタディーグループに位置づけられていたため、配布文書を含め、その審議は非公開である。従って、現地にて情報収集することが必要であった)、条約法上の解釈準則である「後の合意」ないし「後の慣行」による条約体制の変容・発展をどこまで理論的に説明できるかにつき検討を行った。その成果を、国際法外交雑誌誌上にて報告した。また、学説上の検討状況を確認するため、E. Cannizzaro ed., The Law of Treaties beyond the Vienna Convention (2011)を取り上げ、精読した。 次に、環境条約制度内の実行を検討するために、生物多様性条約(CBD)第11回締約国会議に出席し(インド・ハイデラバードにて開催)、主に海洋における生物多様性の保全を目的とした海洋生物多様性保全区の設置に関する議論をフォローし、関連決議等に現れる国家の「合意」の内実を調査するため、日本、EUなどの政府代表団より情報収集した。また、関連して、2010年に採択された名古屋・クアラルンプール補足議定書を、バイオセイフティーに関するカルタヘナ議定書体制の「発展」と捉えて、その国際法的意義と課題につき検討を行った。その成果を、フランス・グルノーブル大学で行われた研究報告会にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的に記載したとおり、本研究は、ILC「時間の経過と条約」の議論を参考にしながら条約体制の変容・発展現象を説明しうるかにつき検討することであるが、H24年度の研究は、ILCにおける当該議題に関する議論を現地にて詳細にフォローすることができ、且つ、それを国際法外交雑誌上にて報告することができたので、当初の予定どおり順調に進展している。 また、本研究は、「条約体制内合意」が具体的に発現し条約制度がダイナミックに発展している環境条約を主な題材として検討することを目的としているが、この点においても、CBD締約国会議に出席することにより最先端の情報収集ができ、また、2010年採択の名古屋・クアラルンプール補足議定書の国際法的位置づけにつき相当研究が進み、外国での研究報告を通じて更に有益なインプットを得られたため、当初の予定どおり研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
H25年度は、引き続き、ILCにおける「条約解釈における後の合意と後の慣行」(「時間の経過と条約」から主題の名称が変更され、2013年から正式議題として議論がなされる)の議論をフォローしつつ、条約体制内合意を条約法上の解釈準則たる「後の合意」ないし「後の慣行」にて理論的に説明可能かを検討していく。また、生物多様性条約を具体的な題材とした条約制度内合意のあり方についても情報収集を継続し、名古屋・クアラルンプール補足議定書の国際法的位置づけにつきまとめ、可能であれば、外国語にて成果発表を行う。 H25年度の最大の課題は、国際捕鯨取締条約という条約体制が当初の漁業条約から生物保護条約へと変容してきたことが国際裁判の場で争われることになった、国際司法裁判所(ICJ)南極捕鯨事件を国際法的に分析することである。原告オーストラリアの主張は、国際捕鯨委員会(IWC)が多数決で採択してきた法的拘束力のない諸決議を根拠に、日本が主張する条約に基づく調査捕鯨の権利が「制約」されてきたというものであり、将に、「条約制度内合意」のあり方につき、ICJが何らかの判断を下す可能性が高い。そこで、7月に予定される本件口頭手続を傍聴し、当事国の主張を現地にて分析すると共に、来年1月に予定させる判決を即座に分析できるよう関係条約や実行につき調査を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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