研究課題/領域番号 |
24530049
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
韓 相煕 九州大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (30380653)
|
キーワード | 国際法 / 国際法学 / 日本の国際法学 / 受容 / 東アジア / 万国公法 |
研究概要 |
平成25年度の研究目標は「20世紀東アジア諸国の国際法学に対する日本の影響」であり、以下の三つをその具体的な研究計画として取りあげた。一、「中国における日本国際法学の影響」:平成25年11月21日~30日、上海図書館を中心に資料調査を行い、先行研究で言及されたことのない新しい著作5冊を発掘した。また、20世紀前半の国際法著作、最近の著作、博士論文などを収集し、分析した。二、「韓国における日本国際法学の影響」:平成25年6月26日~7月1日、韓国国会図書館を中心に資料調査を行った。特に、戦後第一世代の国際法学者による研究結果を数多く手に入れた。また、海洋法や無差別戦争観など日本用語や概念の受容ルートに関する資料も集め、分析を行った。三、「台湾・北朝鮮・ベトナムにおける日本国際法学の影響」:平成25年12月19日~平成26年1月6日、台湾の国家図書館を中心に資料調査を行い、台湾国際法学会に関する資料、新しい資料の発掘、国際法教科書、博士論文などを集めた。また今年は以下のような国際シンポジウムでの報告と二篇の論文執筆を行った。報告は、平成25年5月29日~31日、香港で開かれた「十九至二十世紀初翻訳与東亜現代化国際研討会」(香港中文大学)で「Translating International Legal Terms in East Asia – The Case of Territory」というタイトルで行った。論文の一つは、筆者のASLI(Asian Law Institute, National University of Singapore ) ワーキンッグペーパを「中国語」に翻訳したいとの依頼があり、2013年7月~12月にかけて原著を大幅修正し、現在中国語に翻訳中である。もう一つの論文は、国際法に関する日本の最も著名な英語雑誌(Japanese Yearbook of International Law)に「Yukichi Fukuzawa and International Law」というタイトルの論文を載せた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の研究計画が現在まで円満に進んでいるいくつかの理由があるが、その中でも以下の二点が最も重要である。第一に、充実な現地調査を行うことが出来たことである。平成24年は中国、韓国、ベトナム、そして平成25年も中国、韓国、台湾へ行って徹底的に資料を探し、綿密な分析を行うことができた。この充実な現地資料調査を通じて、先行研究ではいままで取りあげられたことのない新しい著作を含めて、もともとの予想を遥かに超える多くの資料を手に入れることができた。第二に、対外発信の機会が増えていることである。本科研をはじめてから既に韓国外務省、翰林科学院、ASLI(シンガポール)で報告い、平成25年には香港で開かれた「十九至二十世紀初翻訳与東亜現代化国際研討会」(2013年5月29日~31日、香港中文大学)で報告(英語)を行った。また、上記したように、「Japanese Yearbook of International Law」にも研究結果をのせると同時に、他のもう一つの研究結果が中国で出版される著作の一部としてのせられるために現在中国語で翻訳されている途中である。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方向は以下のような二つである。第一に、来年度は今まで集めた資料の分析とまとめた上で、特に「現代」東アジア諸国の国際法著作の分析を行いたい。この分析には、中国、日本、韓国だけでなく、北朝鮮、台湾、ベトナムも含まれる。今年が本科研の最後年なので、中国(北京・上海)、台湾、韓国、ベトナムへもう一回資料調査に行きたい。第二に、研究結果を早くまとめて出版すると同時に、対外発信を続けたい。まず、九州大学の『法政研究』にのせながら、必要に応じて英語、中国語、韓国語に翻訳して各国のジャーナルにのせる為の準備作業も並行したい。また、中国や韓国での報告の機会を増やしたい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
現地資料調査(中国、台湾、韓国、ベトナム)をもう少し長期間実施するつもりであったが、仕事が忙しかったため実現出来なかった。 今年は本科研の最後年なので、出張時間を最大限確保し、現地資料調査(中国、台湾、韓国、ベトナム)をより長期間にわたって充実に実施し、可能な最大限の情報を集めたい。また今年執筆する予定の論文を中国語又は英語に翻訳して刊行する計画なので、その翻訳費としても使いたい。そしてもし少し余裕があれば、本科研の最後の段階で、日中韓から専門家を1~2人招いて本科研の評価を兼ねた簡単なシンポの開催も考えている。
|