研究課題/領域番号 |
24530050
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
吾郷 眞一 九州大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (50114202)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際労働法 |
研究概要 |
研究代表者は本研究にとって必要な文献はすでに多く所持していたが、さらに最近の刊行物で研究テーマに直接関連するものを充実することができた。とりわけ年度末に出張したILO本部でのいくつかの刊行物は価値が高いものであった。 秋にはシドニーで開かれたアジア国際法学会研究大会に出席し、主として国際人権法関連のパネルにおいて意見交換を行い新たな知見を獲得した。同様に国内でも各種学会・研究会に出席して本研究の問題意識をもとにして各種の知見を得た。 年度初頭に刊行された雑誌(『新・判例解説Watch』(vol.10)2012年4月日本評論社305-308頁「消防職員が団体を結成し活動することへの牽制が違法とされた事件」)では、ILO条約という国際労働法が、地方公務員法(国内法)を凌駕するという内容の判旨であることを確認した。また、年度末に刊行された雑誌(日本労働研究雑誌632号2013年2・3月108-110頁書評「マイケル・ヒューバーマン著 ぎこちないカップルー国際貿易と労働基準の歴史」)においては、経済史研究をを国際労働法の切り口から評釈し、国際労働法学の守備範囲の広さを確認した。 年度末に行ったジュネーブILO本部調査においては、国際労働基準実施監視機構の現状について、担当職員から最新の情報を獲得したが、それらは公的刊行物からは得られない、引用ができない内容の情報であるが、国際労働法学を体系的に構築するためにはきわめて重要な情報である。ジュネーブではさらにCERN(欧州原子核研究所)の法務部を訪れ、法務部長等と国際機構の運営において占める非拘束的国際法文書(ILOの活動の大部分が非拘束的文書の集積によること)の重要性を再確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度計画した文献収集・調査研究はほぼ網羅できた。そのなかで、当初予定された上海でのアジア労働法学会研究大会への出席が、当大会の準備が遅れて予定が立たなくなったためシドニーで開かれたアジア国際法学会研究大会で代替した。シドニーではアジア労働法学会で得られたであろう知見と同じかそれ以上のものが獲得できた。座学による認識の拡充と、他の研究者らとの意見交換は、国際労働法体系を構築していくうえできわめて有用で、2年度、3年度に向けた地ならしは満足すべきレベルで達成されたとみることができる。ただ、学内行政業務の集中(九州大学国際担当副学長として定年前にしなくてはならないこと)により、かなり研究の時間が割かれてしまったことは否めないが、2年度からは新しい所属(立命館大学法学部)の下で学内行政から解放され、研究が中心になるので、さらに充実していくことができると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
2年度の研究計画としては、通説的な教科書などにおいて国際人権法が国際レベルと国内レベルで別の実現制度があるとされていることを否定し、実はそうではなくその両者は相互に働きあい、渾然一体となって国際労働法が実現されていくことを明らかにすることがある。この問題意識は、以前研究分担者として参加した最上敏樹研究代表者による基盤研究(B)「国際法における立憲主義と機能主義」の共同研究の過程で獲得したものであり、そこでの結論としての立憲主義と機能主義の融合という認識をさらに展開させていくものである。今年度5月の世界法学会での国際立憲主義についての議論に参加し、また、11月にインドで行われるアジア国際法学会隔年研究大会では、この問題意識に関する発表を行う予定である。ILOジュネーブ本部訪問は初年度末に遂行したので、2年度は省略することができ、海外調査・研究出張はインドなどアジアが中心となる。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費 10万円 国際労働法関係書籍 消耗品 5万円 プリンターインク等 国内旅費 35万円 内訳 世界法学会(東京)、国際法学会(静岡)等 外国旅費 60万円 内訳 アジア国際法学会隔年研究大会(デリー)、ILOアジア太平洋総局(バンコク)等
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