研究課題
24 年度・25年度に実施してきた研究を踏まえて、国家責任体系と刑法の個人責任体系が複合・融合することにより、いずれとも異なる固有の責任体系が現出すると想定する「複合構造モデル」と、国家責任体系と刑法の個人責任体系が競合・抵触することにより、両者の抵触を回避する制度が現出し、これによって国際法における個人責任は、刑法の個人責任体系よりも限定的な内容となると想定する「限定構造モデル」を統合的にとらえ、改めて国際刑事裁判所(ICC)における実行を分析した。具体的には、2010年の再検討会議において導入された侵略犯罪の構成要件などに対する検討も行い、「組織に対する支配」(Control over Organization)の法理の発展が、「システム責任」とも言える新たな責任体系を現出しつつあることを実証的に明らかにした。さらに、国家元首等の刑事責任の追及に関して、ICCのケニアに関する実行等を分析し、組織性・政策性の観点から、個人責任の実体法的な内実が限定・縮小される可能性があることも検討した。また、国際刑事法におけるvictim-oriented perspectiveの発展を両モデルの観点から検討し、さらに国際刑事裁判の実行と平行して実施されている多くのMass Claim Procedureの実行を比較検討することにより、こうしたシステム責任の発想が刑事的な責任追及の範囲を超えて、民事的な賠償請求の局面においても一定の意義を有していることを明らかにした。
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THE INTERNATIONAL LAW ASSOCIATION, REPORT OF THE SEVENTY-SIXTH CONFERENCE HELD IN WASHINGTON D.C.
巻: 76 ページ: 782-813
村瀬信也・洪恵子共編『国際刑事裁判所(第2版)―最も重大な国際犯罪を裁く』
巻: 2 ページ: 3-40