研究課題/領域番号 |
24530053
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
薬師寺 公夫 立命館大学, 法務研究科, 教授 (50144613)
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研究分担者 |
坂元 茂樹 同志社大学, 法学部, 教授 (20117576)
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キーワード | 国際人権規範 / 国際司法裁判所判決 / 国際法規範 / UPR / 人権条約実施機関 / アジア諸国と人権 / 個人の権利 |
研究概要 |
平成25年度は、平成24年度の作業を継承して、薬師寺が主にラグラン事件、アヴェナ事件、ディアロ事件ICJ判決を対象として人権が一般国際法に与えつつある影響について検討する作業を行うとともに、拷問等禁止条約及び強制失踪条約を素材として重大な人権侵害を処罰する人権条約が一般国際法に与える影響の検討を行った。他方坂元は引き続きUPRの検討作業を継続するとともに、人権が一般国際法に与える影響の一側面として平和に対する権利宣言案の検討を行った。 本年度は昨年度から準備を進めてきた英語での国際ミニシンポジウムを6月22日に欧米からフィリップ・オルストン氏(ニューヨーク大学教授)及びアジアからラフェンディ・ジャミン氏(ASEAN政府間人権委員会インドネシア代表)を招き、阿部浩己氏(神奈川大学教授)の司会で開催し、専門家27名が参加して意義ある討議を行うことができた。アジア国際法学会の協力を得た同シンポジウムでは、薬師寺と坂元が基調報告を行い、引き続きラフェンディ氏がASEANにおける人権保障の現況について、さらにオルストン氏がICJ判決と人権の関係について報告を行い、これらの報告について参加者が討議を行った。 また9月には、日本で開催されたアンスチチュ(万国国際法学会)の日本大会に参加された世界の著名な学者と交流できたが、特にその際に、元欧州人権裁判所判事のゲオルグ・レス教授を大学に招いて人権が国際法規範に与える影響についてディスカッションする機会を得た。6月のシンポジウムに継いで、重要な示唆を得た。またこの機会にロザリン・ヒギンス元ICJ判事、ブルーノ・シンマICJ判事、カフリッシュ元欧州人権裁判所判事が報告する2つの研究会で議論できた。薬師寺及び坂元は、これらのシンポジウムを準備し、基調報告を行うおとともに、議論に参加し、貴重な知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3年間の計画の中で、特に重視していた国際ミニシンポジウムを6月に開催することができ、しかもテーマに最もふさわしいと思われるオルストン教授及びアジアの人権関係ではアジアで最初に人権宣言を採択したASEAN政府間人権委員会のラフェンディ・ジャミン氏を招いて研究テーマにふさわしい議論ができたことが研究がおおむね順調に進行している一つの重要な要因である。また、9月には万国交際法学会日本大会で来日された会員の内、元欧州人権裁判所裁判官であったゲオルグ・レス教授とのインタビューを立命館大学に同教授を招いて実施し、人権と国際法の関係について意見を交換した。こうした国際的なシンポやインタビューの面では計画はほぼ当初の予定通り実現できたと評価している。また本研究テーマに関連してPreliminary tentative note on the legal cosequences of the recognition of rights of individuals in the jurisprudence of International Court of JusticeというペーパーをInterantional Human Rights Law Committeeに提出して、同委員会の決議案作成に一定の貢献ができた。 その半面、この年度はこれらのシンポや招聘の準備実施に相当労力がとられたことと、研究代表者、分担者が学会や委員会の役職の業務に追われて、口頭発表やペーパーの形ではいくつか発表できたが、論文等として発表するまでには至っていないので、これは是非2014年度に力を入れたい。
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今後の研究の推進方策 |
2014年度は、最終年度にあたる。分担者の坂元は2013年10月をもって神戸大学から同志社大学に移ったが、ひきつづきUPRとアジアの人権を中心に検討し、これを中心に一般国際法へのインパクトを検討していく。他方、薬師寺は、ILAの人権部会で試論的に作成提出したペーパーを、さらに内容的に詰めて論文に完成させるとともに、主権免除及び刑事免除面でも人権の一般国際法へのインパクトを検討する予定である。 国際的受信と発信では、2014年4月初めに世界人権問題研究センターにAEAN政府間人権委員会の委員一行が訪問されたのを機会にASEANにおける人権の促進と保護について議論したのを皮切りに、今年度も研究費用の範囲内で可能な海外との研究交流を1回は実施したいと考えている。 これらの検討結果をまとめて、薬師寺及び坂元がテーマについてそれぞれ論文を発表することを予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
2014年度は最終年度であるが、10月までに海外で課題に関連したシンポジウム(オーストラリア又は欧州とアジア)への参加を予定しており、そのための費用を繰り越した。 旅費は代表者及び分担者の国内シンポジウムへの参加及び研究代表者の上記海外シンポジウムへの参加旅費に充当する。 物品費は、このテーマに関連するILAでの検討が修了したことを受けて、関連する文献を購入することに使用する。 今年は研究のまとめを含めて学生アルバイトを雇用するので人件費から支出する。
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