本研究では、国際人権法の規範が国家間の相互主義的権利義務を定める伝統的な一般国際法の構造にどのような影響を与え始めているかを国際司法裁判所の判例および人権実施機関の実行を素材として検討した。その結果、個人の権利の承認が国家責任や外交的保護に関する国家的性格の否定や人権規範の対世的性格の承認など伝統的国際法の規範構造に重要な変容を迫る実定法現象が生じていることが明らかになった。この動向に対するアジア諸国の対応は未だ受動的な対応にとどまっている。今後人権の主流化の下で国際法の構造がどのように転換するか、アジア諸国の役割も含めた総合的な検討が臨まれる。
|