日本では、非訟事件手続法及び家事審判法の現代化の必要性に応じ、非訟事件手続法と家事審判法が改正され、後者は家事事件手続法と名称も改められた。日本の社会・経済情勢の変化に伴い、非訟事件として処理される事件が多様化し、同法制定当時には想定されていなかった類型の事件が多く発生していることがその立法背景であるといえよう。非訟事件手続の対象となる事件には、伝統的に民事・家事・商事関係事件が該当され、後見に関連する事件も非訟事件に含まれる。家事事件手続法における後見は審判事項となり、管轄の見直し等、今回の改正により、実務に影響する見直しは多岐にわたっている。同法は訴訟と非訟の区別に基づいて制定されていたものであるが、近時において訴訟の非訟化という現象がみられている。これに対して、非訟の訴訟化という現象はフランス法の特色ともいえる。これらの現象は、訴訟と非訟の区別は容易ではないことを示している。 非訟事件における国際裁判管轄については、訴訟事件の場合と異なり、実体準拠法国と国際裁判管轄国が一致しないといけないという立場、すなわち並行主義が存在したが、ドイツとフランスではこれを放棄するにいたり、非訟事件においても、原則的に訴訟事件と同様に、準拠法の問題とは区別された形態で国際裁判管轄の問題を規律する。 したがって、本年度は、非訟事件に関する国際裁判管轄を中心に研究を行い、ドイツの家事事件及び非訟事件に関する手続法を国際裁判管轄の観点から検討する中で、日本の法状況としては、非訟事件手続法と家事事件手続法の立法内容を検討し、さらに国際的な非訟事件について研究をすすめている。日本法では非訟事件とされる後見開始審判、成年後見人選任審判などが、渉外事件として生じた際に、その国際裁判管轄の原因を定める立法論の観点から研究を行っている。
|