研究課題/領域番号 |
24530059
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
武田 邦宣 大阪大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (00305674)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 独禁法 / 事業法 |
研究概要 |
米国では、Trinko事件(540 U.S. 398 (2004))において、電気通信産業での事業法規制と競争法規制の関係につき、一定の解釈が示された。それは実効性ある事業法規制が存在するならば、競争法規制の役割は小さくなるというものである。同判決を契機に、事業法と競争法の適用関係にかかる米国判例法は大きく変化したと言われる。同じく最高裁判決であるCredit Suisse 事件(551 U.S. 264 (2007))においても、そのような謙抑的立場が指示されている。平成24年度は、米国におけるこれら判決法を精緻に分析した。特に注目したのは、それら判例はすべてロバートコートとよばれる反トラスト法執行に消極的な最高裁により下されたという点である。ロバートコートにおけるブライヤー判事が執筆した、Town of Concord事件を例として、米国最高裁が、事業法と競争法との関係をどのように理解しているのかを、電力産業におけるプライススクイーズの規制として論文にまとめた。 また並行して、学説の分析をおこなった。欧米の競争法研究において、本応募テーマは最も多くの論文が生産されるものとなっている。事業法規制分野での競争法適用に謙抑的な態度を示す判例に対して、概ね学説は反対の立場をとっている。たとえば、米国反トラスト法学界において最も有力な研究者の一人による、H.Shelanski, The Case for Rebalancing Antitrust and Regulation (2011) は、米国反トラスト法による過少規制を論じる近年の代表的著作である。これら学説について整理をおこない、一部を上記論文にまとめるとともに、次年度以降の研究推進における資料となるよう整理した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に記載した平成24年度の研究計画である米国反トラスト法の研究につき、研究成果を公表する目処がたったため。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度と同様に、研究計画に沿って着実に研究を推進する。平成25年度は、米国法にかかる研究を継続すると共に、EU法の研究を行う。より具体的に、次の3点を解明する。 第一に、判例法の分析である。EUでは、Deutsche Telekom事件において、電気通信産業での事業法規制と競争法規制の関係につき、欧州司法裁判所による解釈が示された。それは事業法規制の存在にも関わらず、競争法規制の役割は大きいというものである。同事件では、上流市場におけるアクセス料金について、関連規制と関連規制官庁の承認プロセスを経て決定されたにも関わらず、102条における「濫用」に該当すると判断されている。 第二に、事業法の分析である。EUにおいては、1998年に電気通信分野における完全自由化を実施して以来、垂直統合された独占事業体に規制を課し、競争原理に基づく単一市場の推進、自由化を進めてきている。2002年の改正を経て、現在は2009年の第三次フレームワークに基づく規制改革がなされている。EUにおける事業法改革では、機能分離等、垂直分離にかかる政策オプションが詳細に議論されており、「事業法規制が実効的であれば、競争法規制の役割は小さい」との命題について、事業法規制の強化が解とされていることが分かる。これら事業法改革の動きをつぶさに観察するとともに、競争法にかかる規制実務への影響を検討する。 第三に、学説の分析である。米国と同じくEUにおいても、本応募テーマは最も多くの論文が生産されるものとなっている。それら論調は米国とは反対である。すなわち事業法規制分野での競争法適用に積極的な態度を示す判例に対して、学説は概ね反対の立場をとっている。たとえば、EU競争法学界において最も有力な研究者の一人による、D.Geradineは、米国判例法の立場を支持し、EU競争法による過剰規制を論じる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度と同様に、研究計画に沿って適正に研究費を使用する。
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