研究開始時、日米欧を問わず、電気通信産業における事業法と競争法との関係について、関心が高まっていた。同問題につき、米国最高裁と欧州司法裁判所が、全く異なる判断を下したからである。すなわち米国最高裁は、事業法が存在する場面において、競争法の役割は小さいとし、他方、欧州司法裁判所は、事業法が存在する場面においても、競争法の役割は大きいとしたのである。両判決が結論を分けた大きな理由は、事業法規制に対する信頼の相違であった。本研究は、事業法規制に対する信頼が競争法の適用方法に影響を及ぼすとの問題関心の下、①競争法違反行為における事業法規制の作用、②競争法違反行為を抑制するための実効的な事業法規制のあり方を研究してきた。 本研究期間を通じて、概ね同研究目的は達成されたと考えている。電気通信市場における上記問題の源流として、電力市場における議論が存在することを指摘し、それについて論稿を公表することができた。また、わが国における最高裁判決について、欧米の議論を参照軸として、評釈を公表することができたところである。本研究の成果から、電気通信事業者に変わって、OTC事業者の有する市場支配力について、欧米の関心が高まっていることを知り、2015年度より交付を受けた新規科研課題に接続することができた。
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