研究課題/領域番号 |
24530060
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
笠木 映里 九州大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (30361455)
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キーワード | 雇用 / 低賃金 / 社会的包摂 |
研究概要 |
今年度は、主として、昨年度から継続して行っているフランス法の検討を進めた。具体的には、国家による財政的援助を伴う雇用契約である、いわゆる援助付雇用契約(contrats aides)の制度に着目し、この制度をめぐる法改正、論点、これまでの議論状況の整理などの作業を行った。 フランスでは、失業対策として、賃金の一定割合を国庫から補助したり、あるいは社会保険料を免除(国庫が肩代わり)することで使用者に当該労働者の採用を促すという政策が80年代以降積極的にとられてきた。こうした制度は、フランスでは、上述のように援助付雇用契約と呼ばれる。フランスでも、また日本でも、こうした政策には、賃金補助によって雇用市場をゆがめ、不安定雇用を増大させるとの批判がある。もっとも、フランスでは、2012年に、こうした制度の新しい類型として、未来雇用、世代間契約という二つの制度が新たに導入された。今年度は、フランスへの出張も行いつつ、フランス法に関する各種の資料・文献を参考にして、この2つの制度を中心に、援助付雇用の位置づけ、意義を明らかにするよう努めた。 日本でも、2013年には生活困窮者支援法が成立し、一般就労と福祉的就労の中間にあるいわゆる「中間的就労」という概念が議論されるようになった。フランスでは、上記の援助付雇用をめぐり、「雇用による社会的・職業的包摂」に関する議論が行われてきた経緯があり、そうした議論が、今日の日本の議論状況にもたらす示唆は大きなものになりうると考えられる。 上記の問題意識と研究活動をふまえて、本研究費の主たる成果として、後記研究成果欄に記載の論文「『福祉的』性格を有する労働」をはじめとする複数の成果を公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フランス法に関してまとまった成果を発表するという目標を達成した。日本法との比較については、まだ検討が十分でない部分もあり、来年度における課題としたい。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に行ったフランスの援助付雇用に関して、フランスでは障害者雇用と比較して議論する学説が散見される。日本において、上述の新法によって実現される可能性のある中間的就労が、障害者について論じられてきた福祉的就労と関連して議論されている状況をふまえても、こうした学説はきわめて興味深いものと考える。次年度においては、このような観点から、雇用契約が有する社会包摂・社会統合の意義について、障害者雇用も含めた広い観点から総括を行いたい。また、2014年度前期はフランス・パリ政治学院において在外研究を行うこととしており、上記の内容についてフランス語で成果を公表することも目標としている。
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