本研究は、「研究の目的」のとおり、子どもを対象とした企業の広告活動について、競争法(経済法、消費者法)の観点から考察するものである。最終年度に当る平成26年度は、「研究実施計画」のとおり、子ども向け広告に対する競争法規制のあり方について検討を行った(本検討成果については、平成26年度日本消費者教育学会全国大会(平成26年10月5日・札幌エルプラザ)において報告した。また、同学会報告内容については、同学会編『消費者教育(第35冊)』(平成27年夏刊行)に掲載予定である)。 「子どもは消費者か」という問いかけ(「子どもの消費者性」の確認)が、子どもと企業活動との関係、及び子ども対象広告に対する規制のあり方の検討の出発点であることが、EU・ドイツにおける法秩序の形成の基本認識であったのに比して、日本においては、子どもを保護対象とする法令は複数存在する(例:未成年者喫煙禁止法、風営法、競馬法、青少年保護育成条例等)ものの、これらは「子どもの消費者性」を前提として子どもと企業活動との関係を秩序づけたものではなく、日本の競争法制における子どもの捉え方の視点が弱いことが明らかになった。このことは2005年EU指令が子どもを「脆弱な消費者」と捉えて、子供向け広告を「攻撃的取引」と位置付けた立法との比較からも裏付けられる。 EU及びドイツにおいては、2005年指令制定以前から、放送分野、通信取引分野における子ども保護の立法から行われていた。またドイツの複数判例で子どもの消費者としての脆弱性や年齢を踏まえて企業の広告活動が不公正と認定されており、「Rule of Magic事件」ドイツ最高裁判決(2014年)にも同様の認定がなされている。 EU指令、ドイツ不正競争防止法は民事規律であるが、日本での規律を検討する場合、民事レベルでの規律の構築と、国家規制型の両面からの秩序化が考えられよう。
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