研究課題/領域番号 |
24530062
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
紺屋 博昭 鹿児島大学, その他の研究科, 教授 (30344584)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 労働法 / 労働市場法 / 雇用政策法 |
研究概要 |
この研究では、雇用政策法/労働市場法制を構成する〈雇用創出の法〉〈就業支援の法〉そして〈雇用安定の法〉を想定する。各法が連携し効果を発揮するよう計画・立法され、総合的かつ相互協調的に運用されれば、多くの雇用が創出され、求職者の就業が効果的にサポートされ、創出された雇用機会にマッチする就業者の雇用関係が始まり、個別の労働契約の持続・安定に至り、効果的な雇用対策となるとの仮説である。この仮説に対し、特に雇用創出の現場の自治体等で事業実現の困難があるとの発想をあわせ、当研究は雇用政策の充実と実効化を目的として、雇用政策法/労働市場法制を構成する関連諸法の連携および協調の法技術を基盤に、地方自治体レベルで汎用可能な〈雇用実現の法〉を構想し、具体的かつ効果的な地域雇用プログラムの構築と実証へと還元するものである。 平成24年度は、〈雇用創出の法〉〈就業支援の法〉そして〈雇用安定の法〉の概念整理と理論モデル化を目指し、関連諸法の制定経緯と各種政策事業の進捗推移について各種データや実例の集積を図ろうとした。特に雇用創出に悩む地方自治体が企画実施する雇用関連事業について実体調査を試みた。岩手県被災沿岸部での緊急雇用創出事業や災害復興事業に関する雇用創出事例、あるいは鹿児島県大島郡喜界町(喜界島)における農商ビジネスに関連した雇用創出事例などは、参与的活動を合わせて行い、理論モデルの中途フィードバックとノウハウ関連付けを行った。 また、国の雇用対策法や地域雇用開発促進法等、雇用創出に関する法制度の問題を探るため、各地の労働局職業安定部や各自治体の雇用創出協議会等にインタビューを行い、近時の雇用創出の契機と展開を、本来需要型、計画助成型、代替試行型といった分類を通じて、当事者への刺激・誘発、インセンティブ付与、助成の各相関機能を整理した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
雇用政策法/労働市場法制は、市場の設計合理性と機能有効性を追求するのだが、その実効化と親当事者的な具体化については雇用創出、就業支援、そして雇用安定の実践の〈現場〉からフィードバックされた情報や知見により修正および再構築されるところが大きい。 平成24年度の当研究の遂行にあっては、雇用創出事業の具体的立案者、そして地方公共団体の雇用創出関連セクションをはじめ、各地の雇用創出協議会、職業紹介事業者、職業訓練行政、求人企業等への〈現場〉アプローチを手掛かりに、雇用創出、就業支援そして雇用安定に携わる支援者らの事業実態と当事者の行動態様を調査し、雇用機会の形成刺激と雇用関係の成立までを系列的に構成しながら、関連各法の実現と有効化に関する一体性、連続性、協調・連携性の各点に注目した解明・分析を試みようとした。このことは研究目的を満たし、当研究資料のデータ集積にもちろん寄与したほか、自治体への中途の研究成果の提供依頼にも応えることになった。 資料データ集積の実績と、中途フィードバックおよび地域貢献を理由に、上記の区分とする。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は各地方自治体が実施する雇用創出安定事業等の雇用助成金の給付事例を素材にして、新規創出雇用への求職者の充当過程における就業能力、契約内容、助成給付手続等に着目し、創出から持続・持続安定への法理論モデルをなお考察する。さらに上位レベルとなる国の各種雇用助成事業、例えば高年齢者雇用安定事業等を素材に、同様の視点で調査分析を加え、雇用創出から雇用達成までの過程における当事者への奨励・支援の原理をまとめる予定である。給付対象者たる離職求職者へのインタビュー等も予定している。 法理論モデルの深化を目指し、比較法的アプローチにも着手したい。イギリスやEU が市場政策における弱者救済を機能原理とする一方、アメリカは市場機能の支援ないし当事者バランシングを重視している模様である。先行研究のサーベイとデータベース情報を参照しつつ、雇用機会に対する当事者サポートと結果重視のアンビバレント発生メカニズムとその処理方法を探るべく、連邦労働力投資法と各州職業訓練プログラム内の成果管理基準、労働力ニーズにおける事業者主導の競争的訓練、個別コンサルティング等の制度に着目し調査する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
岩手県沿岸部での調査では、被災地復興事業の遅延や現場浸透へのタイムラグから、なお十分な資料収集や現地ヒアリングをいったん延期せざるを得ない事情が発生し、平成24年度計画の旅費予算の使用執行が次年度に一部繰り越しとなった。 これは平成25年度に使用し、上記事情の好転と調査方法等の見直しを合わせ、研究を進める予定である。
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