研究課題/領域番号 |
24530065
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
上田 真理 東洋大学, 法学部, 准教授 (20282254)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 雇用保険 / 失業 / 最低生活保障 |
研究概要 |
本研究は、雇用保障と最低生活保障の相互関係を、多様な就労者に対して解明することを目的としたものである。多様な求職者(就労経験の有無、健康上の制約の有無、年齢等)の生活困窮に対応するには、最低生活保障が不可欠であるが、同時に、優先する失業保障の機能をともに検証することが課題である。 そこで、平成24年度は、雇用保険法の失業時の生活保障機能を日本とドイツについて比較検討した。その結果、2点が確認できた。1つに、わが国では雇用保険法は確かに加入者の範囲を拡大しているが、とくに短期雇用等により実際に受給権が取得できない人も依然として多いことがなお問題である。たとえば、一方で、加入資格については、わが国では、雇用保険法の適用が2010年から拡大された。しかし、雇用保険の被保険者資格の取得についての確認手続では「任意法規化」がなお争われている。そして、立法上は、短期の有期雇用も強制適用の対象になるが、事業主により従属的個人事業者として扱われる場合には、強制加入の潜脱になっている。形式的には労働者ではないが、従属的な自営業者・個人事業者に対しても雇用保険法4条の労働者か否かについての検討が不可欠である。他方で、雇用保険法の資格喪失はたいへん容易に確認されること、退職事由による給付制限も過剰になされていることから、受給者の生活保障として問題がある。 2つに、失業を捉えるには、失業率に目を奪われることなく、非正規雇用率の継続的上昇や、潜在失業の増加も看過できない(平成23年度『労働経済白書』19頁)。潜在失業者には、健康保険・年金保険に加えて最低生活保障の補完も検証が不可欠になる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本の雇用保険の資格取得及び喪失に関して、争訟を中心として分析し、問題点をまとめた。わが国との比較を通して、ドイツ法から示唆を得ようと、わが国の雇用保険法に該当する社会法典3編の「失業」=就業喪失の定義を巡る議論から、労働契約の関係が終了していなくても、事実上労務の提供をしていない場合には「失業」であるととらえるなど、興味深い内容を確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、わが国では失業者の多くにかかわる退職事由による区別および雇用保険法の給付制限を再検討したい。裁判での争いは多くないが、裁決等も視野に入れて、退職事由による制限の制約を明らかにしたい。その際には、ドイツ法からの示唆も得たい。特に、自己都合退職について、わが国と給付制限規定と類似の規定があるが、運用がかなり異なっている。 また、雇用保険だけでは機能しないのは明らかであり、労働者に対する雇用・生活保障と最低生活保障の機能の関連を検討したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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