研究課題/領域番号 |
24530065
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
上田 真理 東洋大学, 法学部, 准教授 (20282254)
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キーワード | 雇用保険 / 失業 / 給付制限 / 離職理由の偽装 / ワークフェア |
研究概要 |
雇用保険は適用対象を短期有期雇用に対して2010年4月1日以降拡大している。カバーされる労働者が拡大するはずであるが、実際には運用の問題が生じている。今年度は受給資格の取得者が給付制限規定を適用される割合が高いことに着目し、雇用保険法の33条について「自己都合」の離職理由の偽装に関して批判的に検討したのが1つ目の課題であった。2つに、雇用保険法をはじめ、被用者年金・被用者医療保険などの被用者保険法の適用除外はドイツでも近年議論され、被用者保険の適用されない月収450ユーロまでの雇用(ミニジョブ)は、時給自体が不当に低く低賃金雇用を拡大しているためである。とくに女性がミニジョブにつくことが多いが、低賃金であるだけではなく、疾病時の傷病手当金も受給できないし、失業後も保障がない差別的待遇である。ミニジョブを廃止し、すべての雇用関係に被用者保険法を適用するのかが日本にも示唆的であるが、租税システムなども関連するため、ドイツでもなお決着がついていない。今年度のドイツ調査でも低賃金雇用の1つとしてミニジョブの位置づけが問題であることが確認できた。3つに、失業者に雇用保険や生活保護の受給ではなく、むしろ低賃金でも就労することが魅力になるように、労働市場への統合を促進し、活性化するように働きかけをするワークフェアや活性化政策にも目をむけた。もっとも、日本では雇用保険や生活保護を受給していない者が多く、働いているが貧困状態が拡大し、ワークフェアよりもワーキングプアの問題になっていることは日独の相違であることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
雇用保険・被用者保険の適用の特徴は、客観的事実を基準とし、強行性を前提にしているにもかかわらず、日本では適用について、使用者の恣意的な判断が問題になってきたが、本研究では離職理由についても使用者の恣意的な対応を問題にし、研究計画にそって進められている。また、日本とドイツの比較についても、聞き取りをし、運用の異同を認識したうえで、分析を進められ、おおむね予定通りにすすめられている。
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今後の研究の推進方策 |
今後おこなうべき研究課題は、最低生活保障との関連である。失業の変容により、雇用保険だけでは対応できないため、就労を支援し、労働市場への統合を目的とした働きがけをすることと、それに適切に応じない場合には最低生活保障の制限が問題になる。そこで、今後は、活性化政策にも目を向け、失業時の保障を総合的に検討することを課題にしたい。
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