従来の社会保障は一時的又は継続的に就労できない人々を、労働市場の外側で、「受給」者として位置付けてきたが、それらの受給者を労働市場へ(再)統合することが優先課題になっている。典型的には、社会保障法のなかでは高齢社会において課題とされてきた年金の「受給者」を、労働市場へ統合する又は早期に市場からの退出・排除を回避するために、教育の機会の確保、病気の予防・軽減・回復、職業教育の拡充などが重要な政策課題になる。したがって、典型的には、障害のある労働者及び高年齢の労働者の統合を年金生活よりも優先するように、福祉国家は「受動的な」給付の支給ではなく、積極的にそうした対象者への政策を展開し、また個人にも働きかけを強めるわけである。ここに、「受動的」と評価される社会保障の支給を抑制し、むしろ圧力をかけて労働市場へ統合をうながすという動きが生じる理由がある。 日本では、生活保護受給者に対して、上のような労働市場の圧力としての「ワークフェア」、生活保護の早期廃止が課題であるかのような動きがあるが、しかしながら、欧州諸国の政策動向を基に、国内法の整備を迫られているドイツを比較法として検討した結果、障害者、シングルマザー、高年齢労働者に対して雇用保険・社会法典2編(稼働能力のある人に対する生活保護)を活用し、就労支援とともに子の保育や障害者に対する伴走型援助などを拡充していることも確認できた。
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