研究課題/領域番号 |
24530067
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
石井 徹哉 千葉大学, 大学院専門法務研究科, 教授 (20351869)
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研究分担者 |
矢野 恵美 琉球大学, 法務研究科, 准教授 (80400472)
渡辺 卓也 帝京大学, 法学部, 准教授 (90350454)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 刑法 / 情報 / 情報法 |
研究概要 |
今年度は,今後の研究実施の具体的な分担,次年度に向けての準備作業,打ち合わせをおこなったほか,相互に連携して,本格的な研究に向けての準備作業をおこなった。 矢野が,北欧刑法に関する部分は,おもに基礎的な法情報を収集,調査をおこなった。昨年度,サイバー犯罪条約の批准に向けての刑法改正がおこなわれたため,それにともなう解釈論的問題,サイバー犯罪条約後におけるわが国の刑事法的課題について,石井,渡邊がそれぞれ調査研究をおこなった。以上により,次年度の比較法調査の基礎的な作業がほぼ終了した。 今年度の調査では,わが国におけるサイバー犯罪条約関係の刑法改正に関する解釈論的問題,改正法の意義についてほとんど議論されていないなか,共同研究者それぞれが先行して,解釈論的問題を明らかにし,先鞭をつけることができた。とりわけ,不正指令電磁的記録に関する罪と不正アクセス禁止法の改正によるいわゆるフィッシング行為の規制に関しては,それぞれが解釈により処罰の拡張を孕むものであって,それぞれの犯罪の保護法益を慎重に検討し,慎重な解釈をなすべきことを指摘した。 また,情報ネットワークに関係する近時の最高裁判所の判例についても,検討を加え,ネットワーク特有の特質に基づく解釈論のあり方を考察し,判例の問題点を明らかにしえた。ここでは,刑法の総論的な問題が扱われているように見えて,実際には,個別犯罪構成要件の解釈が同時に問題とされ,両方からの個別のアプローチでは,不十分であること,個別犯罪構成要件の解釈に集中しすぎると,総論的な問題に相当程度影響を及ぼし,従来の刑法総論の解釈論を大幅に修正してしまう危険性が明らかにできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,わが国における刑法上の課題に関する検討を終了することができ,これらについて,中間的なとりまとめをおこなって,論文および口頭報告をおこなうことができた。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の基礎的な作業を踏まえ,比較法研究を全面的に実施し,欧州刑法における情報刑法の 枠組みの明確化を図り,わが国おける情報刑法の体系化のあり方を検討することが主たる内容となる。 欧州の状況に関しては,とくにスウェーデンを中心として北欧刑法の比較法調査を十分に実施し,現地調査を おこなうなどしてこれまで不十分であった領域の比較法研究をを実施し,北欧における情報刑法の現状を明らか にする予定である(矢野)。 ドイツ刑法およびEU刑法との比較法は,前年度までの調査状況を総括し,サイバー犯罪条約を統括している欧 州評議会への調査,ドイツ,スイスにおける法制度の実施状況・問題点の実態調査をおこない,たんなる法制度 の比較にとどまらず,法の実態をも踏まえた比較法研究を実施する予定である(石井・渡邊)。 また,米国法との比較調査をも実施し,大陸法圏との異同を明らかにする予定である。わが国の刑法システム がドイツ法の強い影響のもとに展開されてきたことに鑑みると,そのままの形でわが国に取り入れることは困難 であると推測されるが,インターネットにおける犯罪の取組みは,十分に参考となることが推測されるからであ る。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の中間的とりまとめをおこなうため,学会報告を予定していたが,出張旅費を使用するにいたるほどの場所で開催されなかったため,余分が生じた。この余剰分に関しては,平成25年度の調査旅行の期間の延長に使用し,より充実した調査が可能となるようにする予定である。
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