本研究では,起訴・審理の過程においてより適切に刑事実体法を実現するために,必要となる実体法と手続法の「連結」の条件を明らかにすることを目指し,過失犯,とくに注意義務の事実認定をめぐる問題を実体法と手続法の両面から研究した.前者からは,結果回避義務違反の認定と構造論をめぐる議論の関わり,段階的過失論及び管理監督過失論における予見可能性と回避可能性の認定,注意義務の内容を支える「下絵」の意義につき,それぞれの理論的枠組みを検討し明らかとした.後者からは,訴因の明示・特定をめぐる議論を,「要件事実論」と比較して論じることにより,「罪となるべき事実」の定義及びその認定の枠組みを明らかにした.
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