研究課題/領域番号 |
24530072
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
日山 恵美 広島大学, 法務研究科, 准教授 (80559229)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 刑事過失 / 海上交通 |
研究概要 |
主としてデータベースの利用により、海上交通事故に対する、近時のわが国の刑事裁判結果の収集、整理および分析、海上交通における現行の刑事規制の把握を行った。 二船間の事故で公判となっているものにおいては、錨泊中、漁労中、漂泊中の船舶との衝突事案が多く見受けられた。また、衝突に至るまでに相手船を視認していない事案が多かった。検察官の起訴裁量において、一方の船舶の過失が立証しやすい事故であって、かつ死亡事故であることに公判請求が絞られているものと思われる。これらの事案においては、一方の船舶の操船者が死亡しているものが多く、衝突事故における両船の操船者等の過失について、双方に刑事過失があると判断しているのか否かが明確とはなり難い面がある。略式請求で処理された事案の動向の調査が必要である。 また、医療事故や航空事故における、いわゆるヒューマンエラーである単純ミスによる事故は、公判となった事案においては見受けられなかった。 海上交通における現行の刑事規制に大きな変化はないようである。しかし、船舶の輻輳する海域における海上交通の安全に向けた法規制の動きは見受けられ、刑事規制の積極的導入に至っていないだけと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度に計画していた、データベース利用、文献収集等による1)海上交通における現行の刑事規制をシステム的に把握する、2)海上交通の実態について取締りの現状も含めて調査する、3)海上交通事故に対するわが国の刑裁判結果の収集、整理および分析を行うことは順調に進んだ。しかし、4)ドイツ、英米における海上交通事故に対する刑事裁判結果を収集する、5)ドイツ、英米における海上交通事故に対する過失犯論に関する議論状況を調査する、6)ドイツ、英米における海上交通事故に対する刑事規制システムを調査することについては、6)の最新文献の発刊が年度を越すなどしたため、国内についての研究に比較すると不十分な点が残っている。
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今後の研究の推進方策 |
収集した海上交通事故に対するわが国の刑事裁判例について、海事知識や操船経験、捜査経験を有する海上保安官との検討会を実施し、そこでの議論をふまえて整理、分析を行う。また、この検討会において、刑事過失責任限定論の海上交通事故事案における妥当性の検証も行う。 平成25年度に発刊されている外国文献を講読し、英米における海上交通に関する法規制に関する最新の知見を得る。そのうえで、わが国と英米における海上交通に関する法規制の比較検討を行う。ドイツ、英米に関する裁判例、文献調査については、研究代表者が客員研究員として利用可能な所属機関外において利用可能なデータベースも活用する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究代表者と海上保安庁担当者との日程調整が整わず、研究打ち合わせが当初の計画どおりに実施できなかった。また、平成24年度は所属機関で利用可能なデータベースと国内文献による調査を優先的に行ったため、新刊も含めてとりわけ外国文献の購入が次年度に持ち越しとなった。また、海上交通規制に関する文献は法改正状況に即したものがよいため、次年度に購入することとした。そのため、平成24年度の予算が余り、次年度に繰り越すこととなった。 平成25年度の請求分に加えて、海上保安官との検討会参加(東京などにおいて4回実施予定)や、所属機関外におけるデータベース利用等の調査のための旅費(東京2~3回)として使用する。また、購入を持ち越した外国文献および、可能な限り新しいものがよいために購入を控えていた海上交通規制に関する文献を購入する。
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