研究課題/領域番号 |
24530074
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
石川 正興 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (50120902)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 少年非行 / 児童虐待 / いじめ / 住民ボランティア / スクールサポーター / コミュニティ・スクール / 補導委託 / 学校担当保護司 |
研究概要 |
児童生徒の健全育成を目指した「地域社会と学校・警察等との密接な連携体制」の構築が現在強く求められている。そこで本研究では、地域社会の側における「連携の担い手」として期待されている住民ボランティア等の活動の実態解明を通して「地域社会と学校・警察等との密接な連携体制構築のための諸条件」を探ることを目的として調査研究を遂行している。 平成24年度は、本研究グループの全構成員が参加した形の研究会を随時実施し、関係機関・団体の方を招聘して活動実態や課題についてご報告いただき、制度の現状と課題を分析した。神奈川県警察本部少年育成課関係者との意見交換会の開催(8月20日)を皮切りに、神奈川県内における活動を対象とした研究会(以下「神奈川部会」という。)を計3回、東京都内における活動を対象とした研究会(以下「東京部会」という。)を計1回開催した。とりわけ神奈川部会では、学校を起点とした警察・地域社会との連携に焦点を当てて、学校の運営を支援する住民ボランティア団体の方やスクールサポーターの方を招請し調査研究を実施した。また東京部会では、平成25年2月に開所した東京都子供家庭総合センターの状況について訪問調査した。各研究会の開催概要は以下のとおりである。 [神奈川部会]①第1回神奈川部会(9月28日)「滝頭地区子どもの幸せを実現する会、大鳥中生徒を守り育てる会、神奈川警察署スクールサポーターの活動について」、②第2回神奈川部会(11月16日)「横浜市立大鳥中学校における警察・地域社会との連携について」、③第3回神奈川部会(3月14日)「スクールサポーターの活動の現状と課題について」 [東京部会]④第1回東京部会(3月5日)「東京都子供家庭総合センターについて」 さらに、特別支援学校における地域社会との連携について現状を知るべく東京都立白鷺特別支援学校の「公開研究会」(12月7日)にも参加した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」欄記載のとおり、平成24年度は神奈川県および東京都において随時「神奈川部会」・「東京部会」という形で研究会を開催した(前者は計3回、後者は計1回)。これらの研究会を通して、地域社会と学校・警察等との密接な連携体制構築のための諸条件に関する基礎的な調査資料を収集することができた。これは、「研究実績の概要」欄にも記載した本研究の目的に十分適ったものである。とりわけ、住民ボランティア団体やスクールサポーターの活動実態について明確化することができたと考えている。このように平成24年度には十分な研究成果が得られており、平成25年度においても、こうした研究成果を土台として引き続き本研究を推進していくことができる体制にある。したがって、本研究は、現在まで、おおむね順調に進展しているものと言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、認識を共有するため本研究グループの全構成員が参加した形で調査を遂行してきた。平成25年度は、こうした構成員全体での調査を継続する一方で、一層緻密な調査研究を実施すべく研究班を編成し班ごとに個別調査研究を遂行する。現時点で研究班は、(A)「警察関係」班(スクールサポーター、民間防犯団体(ガーディアンエンジェルス等)などを対象)、(B)「学校関係」班(コミュニティ・スクール、発達障害児等への特別支援教育などを対象)、(C)「児童相談所関係」班(被虐待児支援機関、発達障害児支援団体などを対象)、(D)「家庭裁判所関係」班(少年友の会、補導委託先(更生保護法人両全会、仏教慈徳学園等)などを対象)、(E)「保護観察関係」班(学校担当保護司、BBS会などを対象)の5班に編成している。各班で個別に研究会を実施し、対象とする団体等の活動実態に関して調査を継続していく予定である。こうした研究会を通じて、少年非行・虐待防止に向けた地域一体型のボランティア活動の在り方、各制度の連携の在り方等をより広範に検討していくことになる。 また、こうした活動実態に関する調査と同時に、先行研究・公的記録等に関する調査も実施していく。少年非行・児童虐待防止のための地域社会ネットワークに関する先行研究や公的機関が作成した報告書等の公的記録を収集する予定である。これらの文献や記録を通して、少年非行およびその背景要因の一つになりうる虐待の防止を目的とした地域住民ボランティア活動に関してこれまでにどのような評価がなされてきたか、また地域住民ボランティア活動活性化のための実践的な方策としてどのような提案が行われてきたのかを解明する。 そして、本研究グループ全体で上記の調査結果等を総合し検証を行い、制度の現状と課題を分析する。こうした研究成果を最終年度に行う予定の「総括と提言」へと繋げていくことにしたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究では、平成24年度に引き続き平成25年度も、「少年非行・児童虐待防止に関し特色あるボランティア参加の仕組み」を導入する地域へ赴き、その活動実態の把握と抱える問題点・課題などを解明するための調査研究を実施する。調査対象地域は、5つの研究班による個別調査研究が開始されるため、24年度に着手した神奈川県や東京都(主として横浜市や新宿区)に留まらず、それ以外にも及ぶことになる。とりわけ独立行政法人科学技術振興機構社会技術研究開発センターの委託研究(※)において(平成21年度10月から24年度3月まで実施)既に調査研究のための人的ネットワークを築いてきた地域(札幌市・北九州市・千葉市など)は、有力な候補地として既に予定している。こうした個別調査研究の開始と調査対象地域の拡大に伴い、平成25年度の研究支出が増えることが予想される。私どもは、そのことを予め見越して、24年度の研究助成金交付額のかなりの部分を残しておいた。これに25年度新規に支払われる予定の研究助成金額との合計額が、25年度の私どもの研究資金となる。(※本委託研究は、「子どもを犯罪から守るための多機関連携モデルの提唱」という研究タイトルで実施された。) 平成25年度の主な支出費目としては、調査研究に伴う国内旅費、調査地で行う研究会のテープ起こし費用、調査研究の基礎データ・文献の収集などを依頼するアルバイト学生の人件費、調査研究に関連する書籍購入費等である。
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