研究課題/領域番号 |
24530077
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
松久 三四彦 北海道大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (10142788)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 時効 / 除斥期間 / 信義則 / 援用 / 喪失 |
研究概要 |
時効完成後の事情による援用権の喪失の問題を研究する基礎作業として、時効完成前の事情による援用権喪失の関する裁判例と学説の整理確認、近時の状況把握作業をおこなった。そのうえで、以下の研究を行なった。まず。わが国における裁判例および学説の収集と分析については、裁判例を網羅的に収集してきた。それは、主に判例の電子版データベースから検索する作業となるが、キーワードに該当する裁判例は膨大で、その中には、当事者の主張の中に出てくるだけで、判旨中には出てこないため、検討対象外となるものが多数含まれている。そのため、この作業はなお継続中である。ここで抽出された裁判例を、援用権を喪失させた裁判例と喪失させなかった裁判例に分けて、それぞれの判断の根拠を分析し、その要素をまとめ、判断構造を明らかにしようとしている。また、これらの裁判例に関する評釈を中心に、学説は、何に重きを置いているかを時効観や事案類型などにも留意しながら整理分析中である。つぎに、 比較法的分析であるが、ドイツの判例・学説を収集し、読み進めている。また、ヨーロッパ契約法原則、ユニドロワ国際商事契約原則2004などのモデル法の考えの検討にも着手したところである。さらに、平成24年度半ばからは、並行して、援用不要とする権利行使制限期間(除斥期間、国・自治体の債権債務の時効期間など)の適用制限の研究に着手した。そこでは、わが国における援用不要とする権利行使制限期間にはどのようなものがあるか、それらの立法趣旨、制度趣旨を調べることが中心となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
時効完成後の事情による時効適用制限の裁判例の収集が非常に時間を要する作業であるため、当初の予定からは若干遅れているものの、ほぼ順調である。時間を要する理由は、実際の訴訟では、この適用制限の主張がなされることが極めて多く、たとえば、「援用」「喪失」「信義則」などのキーワードからは、検索範囲が判決理由に限定されず、当事者の主張まで含まれることから、膨大な裁判例を検討する必要があるからである。
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今後の研究の推進方策 |
1 時効完成後の事情による援用権の喪失 初年度に引き続き、時効完成後の事情による援用権の喪失を研究する。平成25年度半ばを目途に、わが国の裁判例の全体像のまとめと分析、学説の整理をしたい。 2 除斥期間の適用制限 初年度に引き続き、除斥期間の適用制限を研究する。平成25年度は、わが国における裁判例および学説の収集と分析、および、援用不要とする制限期間の適用を排除することは民事訴訟法の弁論主義とどのような関係に立つのか等、民事訴訟法上の分析を中心におこなう。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度においては、該当可能性のある判例が膨大で、そこから該当判例を抽出する方法の確定が遅れたため、裁判例の抽出と分析にかかわる支援員への仕事の分配が予定よりも遅れた。そのため、支援員への人件費として予定していたとことに未使用額が発生した。また、裁判例の収集・分析が中心となったため、文献の発注が予定より遅れたため書籍代に未使用額が発生した。さらに、カラープリンターも購入予定であったが、未購入である。したがって、平成25年度では、未発注の書籍の発注、カラープリンターの発注、予定より遅れた作業を回復するため研究支援員の人件費として使用予定である。
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