研究課題/領域番号 |
24530077
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
松久 三四彦 北海道大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (10142788)
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キーワード | 取得時効 / 消滅時効 / 時効 / 援用 / 除斥期間 / 権利濫用 / 信義則 / 時効援用権の喪失 |
研究概要 |
i.時効完成後の事情による適用制限(援用権の喪失) 初年度に引き続き、時効完成後の事情による援用権の喪失を研究した。その主要な作業は、わが国の裁判例の全体像をまとめるため、膨大な裁判例の収集と、その分析にあてられた。また、学説も、判例評釈の形をとるものが多いため、文献の収集と分析にかなりの時間を要した。さらに、時効援用権濫用の問題の基礎作業として、権利濫用に関する基礎的な研究にもかなりの時間をかけたところである。 ii.除斥期間の適用制限 初年度に引き続き、除斥期間の適用制限を研究した。平成25年度は、わが国における裁判例および学説の収集と分析、および、援用不要とする制限期間の適用を排除することは民事訴訟法の弁論主義とどのような関係に立つのか等、民事訴訟法上の分析も加味して行った。 また、除斥期間が原則として期間経過のみで権利を消滅させるものであることからは、この除斥期間規定を適用しないことは、一種の反制定法的解釈の色彩を帯びる。そこで、反制定法的解釈のもっとも包括的な研究である、Jörg Neuner, Die Rechtsfinding contra legem.を手がかりに、反制定法的解釈の視点からの検討を加えるため、まず、同論文を読み進め、引用文献の収集に努めた。 なお、犯罪被害者等給付金支給法についても、若干の検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
対象となる判例、学説、本問題に関連する文献は膨大であり、それらを収集し、読み進め、分析しつつ、あらたに文献を収集していくという地道な作業である。そのため、まだ、必要な作業を抱えているが、文献の収集と分析は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は以下のように研究を推進していく予定である。 i.除斥期間の適用制限 前年度に引き続き、除斥期間の適用制限を研究する。平成26年度は、除斥期間制度およびその適用制限に関する比較法的な研究も進めたい。 ii.悪意占有者の時効取得排除の可否 平成26年度半ばから、並行して、悪意占有者の時効取得排除の可否の問題に着手する。 a. わが国における裁判例および学説の収集と分析 わが国においては、悪意占有者であるということだけで時効取得を否定したものはないが、悪意占有者に時効取得を認めた裁判例は極めて少ない。そこで、悪意占有者であっても時効取得が認められた判例の分析(そこでは、違法性ないし不法性の希薄さという事案の特殊性が検討されるであろう)と、悪意占有者の時効取得が認められなかった裁判例の法的構成や事案の特殊性などの分析を行なう。また、この問題に関するわが国の学説の状況を、旧民法時代に遡り、自主占有概念に留意しつつ整理する。 b. 比較法的分析 アメリカ法なども含め、比較法的な研究も行うよていである。
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次年度の研究費の使用計画 |
外部研究会への出席が少なく、関連書籍の出版も少なかったため。 必要文献の収集・研究会出席・パソコン等の購入により、当初使用額使用の予定
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