研究課題/領域番号 |
24530077
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
松久 三四彦 北海道大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (10142788)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 取得時効 / 消滅時効 / 時効 / 援用 / 停止 / 除斥期間 / 信義則 / 時効援用権の喪失 |
研究実績の概要 |
ⅰ.前年度に引き続き、除斥期間の適用制限を研究した。 まず、犯罪被害者等給付金支給法に関する裁判例である、福岡地判平成22年7月8日判例時報2110号25頁、その控訴審である福岡高判平成22年11月30日判例時報2110号23頁、上告審の最判平成23年9月5日を取り上げた。犯罪被害者等給付金支給法は、「…を知つた日から2年」「…が発生した日から7年」 (10条2項) の除斥期間を定め、さらに、平成20年改正により「前項の規定にかかわらず、当該犯罪行為の加害者により身体の自由を不当に拘束されていたことその他のやむを得ない理由により同項に規定する期間を経過する前に第1項の申請をすることができなかつたときは、その理由のやんだ日から6月以内に限り、同項の申請をすることができる。」(10条3項)が付加された。除斥期間規定でこのような完成停止条項を置くものは珍しく、その経緯とともに、上記判例の理由づけを従来の時効停止に関する裁判例および民法724条後段の20年の適用制限裁判例と比較しつつ検討した。 ⅱ つぎに、除斥期間制度の比較法的研究として、おもにドイツの学説を中心に研究した。 ⅲ また、平成26年度半ばから、並行して、悪意占有者の時効取得排除の可否の問題に着手した。 a. わが国における裁判例および学説の収集と分析 わが国においては、悪意占有者であるということだけで時効取得を否定したものはないが、悪意占有者に時効取得を認めた裁判例は極めて少ない。そこで、悪意占有者であっても時効取得が認められた判例を調査するとともに、自主占有概念において悪意占有概念との峻別が一貫してなされていたのかどうか、悪意者排除の可能性を探る見解がなかったに留意して学説を検討した。 b. 比較法的分析 アメリカ法を中心に取得時効の研究に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査対象となる判例、学説は膨大であり、それらを収集し、読み進めていくためにも多くの時間を要するところである。そのため、常に必要な作業を抱えているが、分析と理解はほぼ順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、悪意占有者の時効取得排除の可否を研究する。 近時の民法(債権関係)改正が、本問題の裁判例における顕在化に今後影響をあたえるか(適用制限を必要とし、あるいは問題となる場面の減少など)にも留意して研究したい。 なお、20年の取得時効を規定する民法162条1項は、悪意占有者の時効取得も認められることを明示的に定めるものではない。しかし、言及のない以上これを認める解釈を予定しているものとするならば、悪意占有者の時効取得を否定するのは、いわゆる反制定法的解釈に通じる面がある。したがって、ここでも、除斥期間の適用制限のところで検討した反制定法的解釈の議論をふまえた検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
外部研究会への出席が少なく(あるいは、招聘先から旅費支給があり)、資料分析に時間をかけ、文献の購入が比較的少なかったため。また、パソコンを購入する予定であったが、旧型を使用し続けたため。
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次年度使用額の使用計画 |
必要文献の収集、研究会出席、パソコン等の購入により、当初使用額使用の予定。
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