研究実績の概要 |
平成25年度の会社法理論において社会全体の利益を考える作業を、具体的な形にし、特に債権者の利益、とりわけ法令遵守と連続的に捉えられる詐害的な会社分割の場面について検討をし、「会社分割等における債権者の保護」商事法務2065号という論文にした。今後の倒産法制における法令違反の問題と詐害性の問題とを共通の枠組みで示す研究への足掛かりとなろう。 さらに集大成として、研究代表者の残余権概念の枠組みにのっとり、また、従来の株式持ち合いの場面を念頭に、株主以外の利益をも含めた利益最大化のモデルの構築を「契約による私的利益の規制と株式持ち合いへの応用可能性」飯田秀総ほか編『商事法の新しい礎石――落合誠一先生古稀記念論文集』(有斐閣)67―99頁でおこなった。この論文は字数制約で法令遵守の話を直接には扱っていないが法令遵守にも共通する枠組みであることは平成25年に提出した論文で既に示してある。 そのほか小さいものとして、子会社の親会社株式取得規制という会社法上の具体的法令順守の場面も検討をすすめた。 国際的な発信については、食の安全規制という側面に着目して日台法律家協会に参加したほか、従来から検討してきた金融法の場面について、特に銀行の持ち株規制に着目し、英語論文Regulation of Bank Shareholding: A Functional and Historical Analysis, in Zenichi Shishido ed. Enterprise Law—Contracts, Markets, and Laws in the US and Japan 205-221, Edward Elgar 2014を公表した。国際学会の参加と英語での好評という所期の目的は達成された。
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