民事法上、取締役の法令遵守義務ないし法令遵守が問題となる様々な場面を検討した。その上で、株主利益最大化原則の根拠となる「効率性」基準と、法令遵守ないし法的思考方式の関係性について一貫した説明を与えた。その帰結として、効率性基準だけでは現実に解決しきれない問題が存在し、これらの問題について「さしあたり」の結論を導き出し、かつ、それが「正統」なものでとするフィクションとして法律論があるとした。このことから、取締役の民事責任の場面での法令遵守義務も、効率性基準を直接適用しては解決できない場面に機能することから、株主利益最大化原則の適用はありえないことが導かれる。
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