研究課題/領域番号 |
24530079
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
宮本 ともみ 岩手大学, 人文社会科学部, 教授 (20361040)
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キーワード | 婚姻住居 / ドイツ家族法 |
研究概要 |
本研究は、婚姻共同生活を営むために必要な住居(以下、婚姻住居という。)をめぐる紛争について、民法の家族法領域のなかに固有の制度を整えているドイツ法と民法の家族法領域のなかに固有の制度が存在しない日本法との比較法的考察を行うことにより、婚姻住居利用に関する紛争対応を考える手掛かりを得ることを目的としている。研究手法としては、ドイツおよび日本における婚姻住居利用に関する法的紛争を網羅的に拾い上げて、紛争処理の特色および動向を比較考察することとした。平成25年度の研究実施計画では、関連資料の収集を進める一方、前半に日本法に関する部分の分析および論文公表を終了し、後半にはドイル法の分析に入る予定であった。平成25年度の研究実績の概要は、以下のとおりである。 年度前半においては、ドイツ家族法の関連資料(ドイツにおける離婚後の婚姻住居をめぐる紛争に関する裁判例)の網羅的な収集を、ほぼ計画どおり行った。また、前年度に収集した資料(日本における婚姻住居をめぐる財産分与請求権(民法768条)にもとづく紛争に関する裁判例)を整理し、ある程度分析することはできたが、その分析結果を論文にして公表するという計画は果たすことができなかった。年度後半においては、ドイツ家族法の関連資料(ドイツにおける別居時の紛争に関する裁判例)の収集を、ほぼ計画どおり行い、資料整理も行った。しかし、年度前半に計画していた日本法に関する論文執筆に遅れが出ていたために、後半に計画していたドイツにおける離婚後の婚姻住居利用をめぐる紛争についての分析を進めることができなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
東日本大震災との関連で急務の案件を優先させたために、本研究が遅れてしまった。 平成24年度後半には東日本大震災との関係で災害と法について学会報告をしたが、平成25年度に学会報告を論文集として公刊しなければならなかった。また、岩手県から災害関連死の弔慰金の審査を依頼されているが、依頼件数が数百件に上り、なおかつ、「災害関連死」の認定をめぐり訴訟も提起され、法的論点を整理する必要が生じたために、同問題についての論文執筆についても優先せざるを得なかった。同問題については、現在でも新聞等で度々取り上げられ、更なる論点整理・検討が必要とされており、新たな論文執筆の依頼もある。現実に起きている重要課題であるため、論文公表については本研究よりも優先せざるを得ない状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の当初の具体的な研究実施計画は、以下のとおりである。1.前半は、ドイルにおける別居児の婚姻住居利用をめぐる紛争について分析を行い、その結果を論文にして公表する。夏の資料収集は、後半の研究にそなえて、日独の比較法的考察のために必要な補充的な資料探しを行う。2.後半は、これまでの各分析を踏まえて、総合的な日独の比較法的考察を行う。ただし、各分析を踏まえた考察はボリュームがあると予想されるので、平成26年度後半の公表は、小活として全体的な考察の概要を内容とし、引き続き、半年なり1年をかけて全研究を総括する論文公表に努める予定である。 これまで、文献収集および文献整理については、ほぼ計画どおりに進んでいる。しかし、文献の分析およびその公表が遅れている。当初の研究実施計画でも、やむを得ずペースに遅れが出た場合は、論文の公表を先送りにして、研究計画の最終年度(平成26年度)先2年以内には、目標を達成する全考察の公表を目指す、としている。平成26年度においては、できる限り、これまでの遅れを取り戻すことに努め、関連の小括的な論文公表を目指すが、本研究期間が終了したのちも、本研究の全体の目標を達成するために、全考察の公表に取り組んでいく。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費が超過しているが、全てドイツ家族法の文献を購入している。超過した理由は、ドイツ家族法の関連文献が、当初の予定よりも多く出版されたためである。 次年度も、ドイツ家族法の文献が当初の見込みよりも多く出版される可能性がある。今年度は、資料収集のためにドイツ行きの旅費を計上していたが、多忙のためにドイツ行きを計画することができなかった。ドイツでの資料収集よりも国内で入手できる必要文献を揃えることが先決なので、必要であれば、旅費枠から文献購入(物品費)に充てたいと考えている。
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