本研究の方法としては、従来採られてきた伝統的法学解釈論の方法に従い、旧法、現行法の規定の検討、判例の状況、学説の主張等から、あるべき立法の姿を模索し、立法を取り巻く経済的・社会的状況を把握すべき文献・資料を閲読・咀嚼したうえで、精緻な理論を展開・構築する方法をとる。 平成26年度(最終年度)においては、日本・海外の文献の渉猟を続け、データベースに加える作業とともに、平成25年に公表した立法提言に対する諸方面からの反響を受けて、立法提言のブラッシュアップを図った。 その過程で取り組んだものが、平成26年末に公刊された坂田宏「ドイツ民事訴訟における職権による文書開示制度を手がかりとして」石川明=三木浩一編『民事手続法の現代的機能』(2014年12月・信山社)第1部・判決手続4:57頁~74頁である。職権による文書開示制度を有するに至ったドイツ民事訴訟法であるが、あくまでもこれは証拠収集の手続ではなく、釈明処分に過ぎないとする通説的見解と、新たな証拠収集・開示制度であるとする有力説とを検討したドイツの文献を丹念に読み解くことにより、「証拠収集制度 vs 釈明処分」という二項対立の図式では理論的な問題の解明には至らないこと、むしろ日本の判例のように、事案に沿いつつ、実質秘の観点から行う緻密な理論的な操作によってこそ解決の道が得られるという結論を得た。今後に向けた方向性が明らかとなった点で、本研究にとって大きな収穫であったものと考える。
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