研究課題/領域番号 |
24530081
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
渡辺 達徳 東北大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (20230972)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 消費者クレジット / 高齢消費者 / 債権法改正 |
研究概要 |
平成20年に割賦販売法が改正された後の消費者トラブルの実態を把握するために、国内外の文献資料の収集と検討、クレジット業界・行政へのヒアリングなどを通じた調査を行った。国内外の状況のうち、国内法との関連では、目下作業が進捗中の民法(債権法)改正が消費者法にどのような影響を与えるか、また、それに伴い、消費者クレジット法制の制度設計につき新たな検討ないしは再考を促す要因が生じ得るかを考察するよう努めた。また、高齢者をはじめ取引上の判断能力を欠く人たちに固有の問題は、平成12年にいわゆる成年後見制度が導入されてから10年以上が経過したことに伴い、見直すべき課題を含んでいないかを洗い出すことにも意を用いた。さらに、外国法・比較法との関連では、民事契約法及び消費者法制の分野において積極的に法整備及び統一を進めるEU関係の検討を進めた。 他方、平成20年法改正後におけるクレジット業界の現状把握及び消費者トラブルに 対する同業界の対応につき調査を行った。同業界は、クレジット加盟店や販売店などを通じて消費者トラブル事例を第一次的に把握する窓口と位置付けることができ、消費者団体や行政機関とは異なる角度から実態把握を進める効果があることが判明しつつある。さらに、行政の消費者相談窓口(主に仙台市消費者センター)を通じた消費者トラブルの現状把握も進めたほか、携帯電話及びスマートフォンの購入や通信契約の締結に伴いクレジットが利用され、それに起因する新たな問題が指摘されていることから、電気通信事業に係る行政機関(主に東北総合通信局)を通じた実態の把握にも努めた。 以上のとおり、平成24年度は、近時の法改正の動向がクレジット取引に及ぼす影響を考察するとともに、新たな消費者トラブル事例をも念頭に置き、各方面を通じてその実態を把握することが研究の主要な内容を占めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この研究は、これまで消費者トラブルの発生と法改正を繰り返してきたクレジット取引の分野に伏在する実務及び法理論上の問題点を改めて分析・検討し、安定的な制度を構築するための法的提言を行うことを目的としている。 3年計画のうち1年目にあたる平成24年度は、平成20年法改正後のクレジット取引を、諸方面からのヒアリングや裁判例・相談事例の収集を通じて把握することに重点を置くこととしていた。 上記「研究実績の概要」に記したとおり、クレジット取引をめぐる消費者トラブルの実態把握は、クレジット業界団体や関係行政機関からの情報収集を通じて、おおむね順調に進めることができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次の段階として、一方では、平成24年度に得られたクレジット取引実態に係る調査結果を整理・分析し、他方では、既存のクレジット取引に関する研究成果を改めて精査することにより、直近の法律事実を既存の研究成果によって説明し、有益な解決を導くことができるかを検証する作業を行う。このことを通じて、平成20年法改正の効果とその限界を明らかにすることにより、消費者クレジット法制の将来展望を描く道筋を見出すことが可能になると期待される。 研究の最終段階では、割賦販売法のみならず、消費者基本法、消費者契約法、特定商取引法、金融商品販売法など消費者保護諸法の理念との摺り合わせや規定内容の平仄などをも考慮しつつ、次に必要となるであろう法改正の基礎的課題を明らかにし、、ひいては、将来の安定的・発展的なクレジット取引を支える理論的基盤を提示することを目指すことになる。この消費者クレジット法制の新構築を試みるに際しては、外国法・比較法の成果を十分に汲むことも意識される。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、交付金額を効率的に執行したことに伴い未使用額が生じており、平成25年度請求額と合わせ、平成25年度の研究遂行に使用する予定である。
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