研究課題/領域番号 |
24530083
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
大塚 章男 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 教授 (50384863)
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キーワード | コーポレート・ガバナンス / 法と経済学 / 会社法 / 契約理論 / ステークホルダー / エージェンシー理論 / 株主利益最大化 |
研究概要 |
本研究は、(1)比較法的手法を用いて、コーポレート・ガバナンスを、経済学における契約理論・「組織の経済学」およびステークホルダー・モデルから考察し、(2)従来別個に検討されてきた効率性と公正性との両基準を備えた新たなガバナンス・モデルを探求し、(3)これを法学からも検証する、というものである。 第2年度は、主として日米の経済学分野における、コーポレート・ガバナンスに関する基礎資料を収集し研究することから着手した。ただし、前年度からこの分野の文献の収集を行っており、また国内の経済学者へのインタビューも実施していることから、主としてこれらの文献の読み込みを行った。また、UCLAロースクールとコロンビア大ロースクールを訪問し、会社法と「法と経済学」を専門とする教授にインタビューすることにより米国文献から生じた疑問を解消することができ、同時に近時の学説の潮流を把握することができた。 米国のコーポレート・ガバナンスの分野においては契約理論(contract theory)とAgency Theoryが主流といえるが、米国会社法におけるコーポレート・ガバナンスの考察は、これら理論の帰結とも言える、いわゆる株主価値最大化論(shareholder wealth maximization)のみによって支配されているのかというと、そうではない。現実にアメリカ会社法の下においても株主以外のstakeholderの利益を考慮している。敷衍していえば、規範的な分析(normative analysis)に加えて機能的な分析(functional analysis)が重要であるということである。したがってガバナンス・モデルも重要であるが、このような機能的分析も今後は重視すべきである。 こうした観点を礎石に第3年目の研究を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第2年度は、主として日米の経済学における、コーポレート・ガバナンス(さらにはコーポレート・ファイナンス)に関する基礎資料の読み込みを行ってきたが、米国の経済学の最新文献の収集については十分には至らなかった。他方で、日本の経済学者へのインタビューは1年目に実施しており、また「法と経済学」からのアプローチによる文献収集と読み込みはほぼ所期の目標を達成した。また当初、経済学の分野で先端の研究を行っているシカゴ大学ビジネス・スクールの教授、コロンビア大ビジネス・スクールの教授等にインタビューを行う予定であったが日程が合わなかった。しかしながら、UCLAロースクールとコロンビア大ロースクールにおいて会社法と「法と経済学」を専門とする教授にインタビューをすることができ、ほぼその目的を達成したといえる。 会社法と「法と経済学」の観点からのコーポレート・ガバナンスの研究、またイギリス2006年会社法に関する研究の成果として、慶應法学に「コーポレート・ガバナンスの規範的検討-日本型モデルの機能的分析へ-」と題する論文を、また国際商事法務に「イギリス2006年会社法における取締役の責任-会社の成功促進義務を中心として-」と題する論文を発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
第3年度は最終年度として、2年間の調査・研究を踏まえ、コーポレート・ガバナンスにおける法律学と経済学の融合を図る観点から、ガバナンス・モデルを構築し、機能的分析を加えることによって、最適なガバナンスを提案したい。 第2年度に米国の経済学の最新文献の収集が未了だったため、これを完了し読み込みを完了したい。この結果も踏まえて、さらに研究成果を論文にまとめる予定である。できれば米国ローレビューに投稿して、コーポレート・ガバナンス先進国のアメリカで評価を問いたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
文献の購入と外国文献の校閲につき未着手のものがあったため、繰り越しとなった。 研究テーマに関する文献の追加購入、米国ローレビューに投稿予定の論文原稿の校閲の費用などにつき、計画書に従い使用する予定である。
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