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2013 年度 実施状況報告書

裁判における計量経済学的・統計的手法の利用:会社法・証券法の分野を例に

研究課題

研究課題/領域番号 24530084
研究機関東京大学

研究代表者

藤田 友敬  東京大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (80209064)

キーワード会社法 / 証券法 / 実証研究 / 計量経済学 / 統計学
研究概要

平成24年度の結果を踏まえ研究領域を拡張した.第1に,株式買取請求事件以外に,いわゆるMBOにかかる案件についても検討を試みた.
いずれの場合も,組織再編計画・MBO計画のアナウンスが投資家にいかなる情報を与えていると考えられるのか不明確な点があるために,その後の具体的な条件の公表の効果についても不明確な点が残ることが分かった.
第2に,虚偽の情報開示が行われた市場で取引を行った投資家の損害賠償についての検討にも着手した.有名なオリンパス事件をめぐって投資家が訴えを提起しているため,この事件を素材に,アメリカにおける先行研究(たとえば,Patrick A. Gaughan, Measuring Business Interruption Losses and Other Commercial Damages, Second Edition, John Wiley & Sons, Inc., 2009, Ch.10等)を参照し検討した.その結果,計量経済学的手法・統計的手法を用いた推計額と金融商品取引法21条の2第2項の推定規定を適用した額とに相当ずれが生じることが分かった(ただしこの事件においては金融商品取引法21条の2第2項の適用自体が,かなり面倒な解釈を含んでいる).なおこの事件ついて意見書を執筆した関係で,事件係争中は研究成果の公表に若干の制約がある.
最後に,「会社法制の見直し」にかかる会社法案の可決が見込まれることとなったため,当初の研究計画には組み込まれていなかったが,コーポレート・ガバナンスの企業価値に与える影響・法制度(ソフトローを含む)の役割に関する実証研究を行った.裁判過程における統計的手法の利用そのものの話ではないがそれと密接に関係する問題である.研究成果は,日本私法学会シンポジウムにおける研究報告としてすでに公表されている.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の目的は,会社法・証券法の分野において,すでに一部の裁判において試みられている,計量経済学的手法あるいは統計的手法の利用に関して,その可能性を探求し,①このような手法を用いることの具体的なメリットは何か,②このような手法が用いられることが望ましいのはどのような曲面か,③具体的にどのような形で利用可能なのか(標準的手法があるのかという点を含め),④利用する上で特に留意しなくてはならない点(技法上あるいは法学的な見地から)は何か,といった諸点を明らかにし,今後の裁判の質の向上に資することにある.研究2年目には,株式買取請求事件に加えて類似の類型であるMBOにおける価格決定請求事件,さらにまったく別の問題種類の事件として,虚偽開示がなされた場合の投資家による損害賠償請求事件にも検討範囲を拡げた.さらにコーポレート・ガバナンス及びそれにかかる法制度の企業価値に与える影響に関する実証研究をも同時に行い,これについては学会発表の機会を得た.2年目の研究は,基本的には順調な進捗状況と言えるが,検討範囲を拡げた結果,未解決な理論的課題がさらに積み重なった面もある.本年度からは,具体的な研究成果を公表するための問題点の絞り込みと,理論面の検討の強化に努めたい.

今後の研究の推進方策

平成25年度に着手した2つの事件類型,(1)裁判所による株式の価格決定(株式買取請求・MBOにおける価格決定請求)及び,(2)虚偽の情報開示がなされた場合の投資家の損害賠償請求について,さらにサンプルを加える等,これまでの研究を補充すると同時に,得られた結果についての理論的分析に力を入れたい.(1)については,組織再編・MBOに関する個別的な情報が開示されていくプロセスで,どういう前提で株式の市場価格が形成されていると理解するのかという点と,そもそも裁判所による価格決定をどのような前提で行うのかという点について,明確に整理することが重要な課題となる.(2)については,計量経済学的・統計的手法を用いる場合と,現実に裁判所が認定した額・法律上の推計額がどのぐらい差があるか,その差をどのように理解すべきかと行ったことを検討することにしたい.この領域においては,アメリカにおいて相当量の研究の蓄積が存在するため,できる限り,それらをも参照する.
成果については,本研究が,さまざまな異なる論点についての個別的検討の集積という性格を有することから,各論点毎に何らかの結論が得られる都度,適宜公表していくこととしたい.また研究の性格上,特定の結論が出て終わりというよりは,新たな領域・事件類型についても同様のアプローチの検討を拡げていくことが考えられるため,本研究それ自体の完成とは別に,これをさらに発展させることのできる領域・事件類型の探索も心がけたい.

次年度の研究費の使用計画

図書の見積額と実際納品された際の金額に誤差があったため.
図書費の一部として執行する予定.

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2013

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] (株式保有構造と経営機構--日本企業のコーポレート・ガバナンス)本シンポジウムの目的2013

    • 著者名/発表者名
      藤田友敬
    • 雑誌名

      旬刊商事法務

      巻: 2007号 ページ: 4, 16

  • [学会発表] (株式保有構造と経営機構--日本企業のコーポレート・ガバナンス)本シンポジウムの目的2013

    • 著者名/発表者名
      藤田友敬
    • 学会等名
      日本私法学会
    • 発表場所
      京都産業大学(京都府・京都市)
    • 年月日
      20131012-20131013
    • 招待講演
  • [図書] 相場操縦の規制2013

    • 著者名/発表者名
      藤田友敬
    • 総ページ数
      109
    • 出版者
      公益財団法人日本証券経済研究所・金融商品取引法研究会
  • [図書] 会社・金融・法 下巻(「支配株式の取得と強制公開買付---強制公開買付制度の機能」)2013

    • 著者名/発表者名
      藤田友敬,神田秀樹,山下友信,神作裕之ほか
    • 総ページ数
      800(33-77)
    • 出版者
      商事法務

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公開日: 2015-05-28  

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