研究課題/領域番号 |
24530085
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
角田 美穂子 一橋大学, 大学院法学研究科, 准教授 (10316903)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 不動産賃貸借 / 賃借人保護 / 消費者法 / 不当条項規制 |
研究概要 |
消費者契約法が施行されて10年以上が経過したが、そのなかで不動産賃貸借契約をめぐる裁判例が圧倒的存在感を示している。消費者契約法は、賃借人保護という古くからある課題に何をもたらしたのか。また、消費者契約法の解釈適用の課題として、何をもたらしたのかを検討した。 結論としては、①消費者契約法は、敷金や礼金、更新料という賃料以外の金銭的負担という従来からみられた取引慣行に、市場における公正性テストに耐え得るかという視点からの法的審査を行ったこと、②このことは、住居不動産賃貸市場の構造的変化を経て、従来の賃借人保護法理を支えてきた「経済的弱者」としての賃借人という像は今日妥当せず、市場のルールとしての消費者契約法によって律せられるようになったことを意味する、③ただし、平成23年に相次いで現れた敷引条項と更新料条項をめぐる最高裁判決は、住居不動産賃貸市場の構造的変化をもっぱら需給バランスの変化(住居の絶対的不足から空家率上昇の時代へ)に収れんさせて捉えており、仲介業者の役割が変化していることには十分な考慮が払われていないことを明らかにした。以上の問題意識から、ドイツ法・ヨーロッパ法の議論を参考に、「不当条項規制における第三者関与モデル」を提唱した。 そのほか、平成24年9月には、ドイツ法曹大会において「ドイツ消費者法の将来像」が論題に取り上げられ、議論がなされた。同大会を傍聴し、傍聴記を執筆・公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第1点目は、平成24年度日本私法学会シンポジウムの報告であったため、スケジュール管理上の失敗が許されなかった。第2点目のドイツ消費者法の将来像については、理論的により深めた検討は次年度以降の課題とし、民法改正論議が進展する我が国にとっても参考になるような情報提供に特化した。
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今後の研究の推進方策 |
民法(債権関係)改正論議の進展状況をにらみながら、消費者契約法の実体法部分の改正の方向性とその理論枠組みについて、引き続き、検討を加える。消費者委員会における消費者契約法検討作業チームに参加し、チーム内で①消費者契約法の適用範囲、②適合性原則・不招請勧誘禁止の導入可能性を担当していることから、そこでの議論を手がかりとしながら、各論的検討を深めたい。 各論的課題のひとつとして、消費者契約法への適合性原則の導入の可否というわが国特有の議論については、従来から行ってきた私法理論的検討を纏めて単著として出版する。
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次年度の研究費の使用計画 |
年度計画を適切に遂行することに努めつつ、予算の効率的な執行に鋭意努力したが、最終的には8164円の未使用額が発生した。なお、平成24年度に発生した未使用額については、平成25年度の予算と合わせて執行する予定である。 具体的な使途としては、各論的課題のひとつとして、消費者契約法への適合性原則の導入の可否というわが国特有の議論については、従来から行ってきた私法理論的検討を纏めて単著として出版に向けた準備を行う。そのために、従来の研究業績の校正や情報整理のための作業員を雇用する。 また、ドイツ・ヨーロッパレベルにおいて、消費者法・契約法の統一化に向けた議論が進展していることから、夏季に現地調査を実施する。
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