研究課題/領域番号 |
24530085
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
角田 美穂子 一橋大学, 大学院法学研究科, 教授 (10316903)
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キーワード | 適合性原則 / 消費者契約法 / 不動産賃貸借 |
研究概要 |
1.平成25年度の研究活動の中心は、適合性原則に関する従来の研究成果を一書に纏めたことである。 適合性原則とは、顧客の属性(知識・経験・財産状態、契約の目的)に適合しない商品・サービスを勧誘してはならないとのルールである。アメリカの証券取引の領域における自主規制や行政監督ルールに起源を有するこの投資家保護ルールは、今日、金融サービスの領域におけるグローバル・スタンダードとなっている。わが国においても適合性原則は、金融サービスの領域における勧誘・販売ルールの中核をなし、金融危機を経て一層の重要性を獲得しつつあるが、同時に、消費者法や民法(債権関係)改正における適合性原則の要請の部分的な実現、更には消費者契約法への導入が論じられるなど、投資家保護の領域を超えて消費者保護のルールへと変貌も遂げつつある。このような発展は、他国に例をみないわが国特有のものである。 このような複合的な発展を遂げつつある適合性原則について、ドイツ法の比較法的検討、それも19世紀末から近時の金融危機後の規制改革まで120年余りにわたる法発展を追いながら、投資家保護と消費者保護の交錯に光を当て、個人の権利救済を実現する民事ルールとしての「適合性原則」の可能性について検討を加えた。 2.消費者委員会における消費者契約法検討作業チームに参加し、「適用範囲」「適合性原則・不招請勧誘」についての検討・報告書作成を担当した。 3.EU委員会の不動産賃貸借に関する国際研究プロジェクトへの協力活動の一環として、日本法レポートの監修を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
適合性原則の私法理論的検討については、その重要性が認識されながら、変化が激しいためにまとまった研究成果がない状況であった。民法(債権関係)改正の議論動向を踏まえれば、良いタイミングで、まとまった研究成果を世に問うことができたと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
1.消費者概念・事業者概念や、消費者契約法の法的介入の正当化原理について、理論的検討を進める。 2.適合性原則に関する研究成果について、欧文での研究発表の機会を探る。 3.ヨーロッパ契約法の動向調査のため、夏期に3週間程度の現地調査を実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究成果の公表に向けた資料整理をお願いしている助手の勤務時間の事前予想が困難であったため。 資料整理の人件費
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