平成26年度は本研究課題の研究期間の最終年度であるため、これまでに積み重ねてきた研究の取りまとめとして、①利益相反取引に関する取締役の規律づけ、②企業結合関係についての親会社・子会社の株主保護法制のあり方、③会社分割における債権者保護のあり方、についての成果発表等を行った。 利益相反取引に関する取締役の規律づけに関して、平成25年度に実施した研究を発展させ、利益相反取引に関与した取締役の任務懈怠責任に関する論文を公表した。同論文では、自己のために会社と直接取引を行った取締役の責任について、民法改正による債務不履行責任の規制の修正にも配慮して、責任の性質と損害の関係について、当該責任を無過失責任とする解釈を再確認した。また、この責任に関する会社法428条の解説を「会社法コンメンタール」に掲載した。 親子会社関係における親会社と子会社の利害調整については、平成26年6月の会社法改正に関連して、親会社株主の保護に関する論文を公表した。そこでは、多重代表訴訟制度、親会社による子会社株式の譲渡についての親会社株主の関与、企業集団における内部統制システムの見直しに重点を置いて検討した。このほか、親子会社間の利益相反関係等を考慮した社外取締役要件の修正等に関して、改正内容の紹介・検討を大阪弁護士会や大阪商工会議所での講演会等で行った。 会社分割のおける債権者保護のあり方の検討は、会社法改正のための議論を踏まえて、平成25年度より本研究課題の一部として検討を進めたものである。これについても、詐害的会社分割におけるいわゆる残存債権者保護など改正会社法に含まれる会社分割関連の債権者保護制度について検討し、論文を公表した。また、これに関する講演等も実施し、研究成果を広く発信した。
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