研究課題/領域番号 |
24530090
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山下 典孝 大阪大学, 高等司法研究科, 教授 (00278087)
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キーワード | 告知義務 / 因果関係不存在特則 |
研究概要 |
平成22年4月1日より施行された保険法においては、民法との関係が非常に重視され、また片面的強行規定の導入などから、平成20年改正前商法における任意規定を前提として構築された様々な保険法理論について修正や新たな理論の構築が求められる問題も生じてくるものと考えられる。本研究は、保険法に対応した新保険約款を踏まえた新保険法における理論面のみならず、運用面においての問題を検討するものである。 平成25年度は以上の研究目的に関連して、無免許者による免許証の色の告知が告知義務違反にあたり、詐欺にもあたるとして保険者の免責が認められるとした仙台高判平成24年11月22日判決(判時2179号141頁)について、検討を行い、保険法下における告知義務が申告義務となったこと、告知義務違反の事実と保険事故との間の因果関係不存在特則との関係、民法の意思表示との関係について、判例解説を行い検討を加えた。 保険法下における危険増加による契約解除、重大事由解除、保険者の免責に関する問題について研究を行った。研究成果は出版物の刊行時期の関係で、平成26年度となっている。法律専門職業人賠償責任保険における保険者免責条項が保険法17条2項との関係でどのように解釈すべきであるかについても検討を行った。研究成果として「法律専門職業人賠償責任保険における一考察」と題する論文を執筆した。任意自動車保険契約の基本契約の1つとなっている人身傷害補償保険契約に関して、実際に販売されている保険商品との関連で生ずる問題等について、実務家との研究会に参加し、意見等を述べる機会を得ることができた。損害保険判例研究会において、集中豪雨、道路冠水から下車避難中の濁流による被保険者の溺死につき運行起因性の要件を満たさないとして自賠責保険金請求を棄却した事案である東京高裁平成25年5月22日判決の判例研究を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
生命保険契約における保険契約者の任意解除、危険増加による解除、重大事由による解除、傷害疾病保険契約における保険者免責に関する各論点についての解説の原稿を執筆したが、刊行が遅れており平成25年度の実績とはなっていない。同様に、保険法コンメンタールの分担執筆の原稿については、平成26年度の刊行となるため、平成25年度の実績となるもは少なくなっている。
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今後の研究の推進方策 |
保険法における重大事由解除を巡る裁判例として福岡高判平成24年2月24日判タ1389号273頁の判例研究報告を予定しており、保険法制定前における議論と保険法制定後での理論的な問題について検討を加えることを予定している。また人身傷害補償保険が保険法における契約分類との関係や保険者代位との関係で、どのような法的問題があるかについても検討を行うことを考えている。本年度が最終年度もあることから、比較法的な観点からも、ベルギー、フランス、カナダと対比も行いたいと考えている。研究成果をまとめる前に、中間報告という方法で、実務家が集まる研究会や、日本保険学会での部会報告等での研究報告を考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究成果の刊行が遅れたことや、研究成果が少なかったために、抜刷別刷のための費用が掛からなかった点が1つである。債権法改正に関連する書物の購入を控えてしまった点も理由となる。 平成26年度は研究の最終年度であることから、研究成果をまとめ、抜刷別刷費用や研究会での報告機会を増やすことから、平成25年度の残金部分はそれに充てることを考えている。
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