平成22年4月1日より施行された保険法においては、民法との関係が非常に重視され、また片面的強行規定の導入などから、平成20年改正前商法における任意規定を前提として構築された様々な保険法理論について修正や新たな理論の構築が求められる問題も生じてくるものと考えられる。これらの問題について、重大事由解除、危険増加による契約解除、未必的保険金請求権の帰属、傷害疾病定額保険契約における保険者免責、請求権代位、等の解釈問題について研究を進めた。 具体的には、火災共済契約における詐欺行為を理由として生命共済契約の解除を認めた裁判例について判例研究を執筆し、重大事由解除に関して保険法施行前の解釈と保険法施行後における解釈について言及した。同様に、傷害疾病定額保険契約における保険者免責について、特に被保険者による故意による事故招致免責と、傷害保険における保険事故概念である傷害の3要件の1つである偶然性の立証責任との関係について、保険法施行後の議論等も踏まえて検討を行い、分担執筆の書籍において言及した。また重大事由解除の片面的強行規定と、保険事故発生後の不実申告との関係や、暴力団排除条項との関係、危険増加による解除に関する解釈問題等についても、保険法施行後との関係について検討を行った。さらに、保険事故発生前の未必的保険金請求権の帰属を巡り、保険事故発生前にも具体的に誰かだ保険金受取人である必要性があり、第三者のための生命保険契約を締結していた場合でも、該当する死亡保険金受取人が不存在の場合には、一般原則に戻り、自己のためにする保険契約となる場合についても理論的は問題について研究会において報告を行った。
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