平成26年度は、以下の研究を行った。 1.前年度までで明らかになった、民事訴訟における当事者間の責任分担と、訴訟制度の正当性担保の関係に基づいて、具体的な論点として、重複訴訟と相殺の抗弁における責任分担の構造について研究を行い、民事手続研究会(九州)にて研究成果を報告した。報告結果については、近日中に論文の形式で発表予定である。 2.平成26年度に行った任意的当事者変更に関する研究をさらに進めた(文献収集等)。この成果は、平成27年度中に論文を執筆の上公表する予定である。 3.当事者変動と責任分配に関する具体的な問題の一つとして、詐害防止参加と補助参加との関係を分析し、福岡民事訴訟判例研究会にて報告を行った。 研究期間全体を通じて、第一の研究目的である、任意的当事者変更における当事者責任の分配については、任意的当事者変更制度が存在することによって、原告の被告特定責任がどのように変質するかや、訴え提起前における被告調査手段の欠如およびその現代的問題などを分析した結果、従来の通説よりも、より軽い要件を持つ任意的被告変更制度を提唱し、日本における当事者特定・確定問題に対して、一定の提言を行うことができた。ただし、そこで得られた責任分配問題の重要性(それが民事訴訟制度の正当性問題と深く関わり、その正当性の論証が必ずしも容易でないことなど)が、当事者変動に限らず、民事訴訟制度全体にかかわる基礎理論的問題であることから、研究計画上最終年度に予定されていた、当事者変動全体における責任分配問題については、必ずしも十分に遂行することができず、その代替として、責任分配がより先鋭的に問題となる、重複訴訟と相殺の抗弁などの別論点を優先的に分析することとなった。この分析結果は、近日中に改めて当事者変動問題へ反映させ、当初の研究計画全体を遂行する予定である。
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