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2012 年度 実施状況報告書

格付会社への法的規制に関する比較法的考察

研究課題

研究課題/領域番号 24530097
研究種目

基盤研究(C)

研究機関成城大学

研究代表者

山田 剛志  成城大学, 法学部, 教授 (30282966)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード格付会社
研究概要

2011年欧州危機に際して、ギリシア国債をはじめとして、格付会社の各国国債へのいわゆる勝手格付が欧州危機を助長したという批判が強い。イタリアでは米系の格付会社が警察による捜査を受けたというが、欧州各国は、米系格付会社の動向には、投資銀行や機関投資家がサブプライムローンの証券化に際して、格付機関の格付を無条件に信頼したことが、その後の世界的危機を引き起こした一つの要因というのが定説となっているが、その際格付会社による不適切な格付及び証券化商品の原資産の開示が不十分だったことが、その原因である。
投資家が判断を誤った背景には、証券化商品に実態以上の高い格付けが付されていたからである。格付け機関が実態より高い格付けを付けた理由として、1)証券化商品の格付けビジネスにはもともと利益相反問題が存在する、2)格付けモデルの妥当性に関し適切な検証またはディスクロージャーがなされていなかった、3)投資家が格付けとは民間企業の評価であるという事実をよく認識していなかったことが理由として挙げられる。
その後世界各国で格付会社を規制する検討がなされ、同時に証券監督者国際機構(以下IOSCOとする)は、格付会社の自主ルールに盛り込むべき「信用格付機関の基本的行動規範」を2008年に改訂した。一方アメリカでは、2007年より格付会社の登録制を開始し、その後SEC規則を改定して格付会社に対する規制強化を図っている。また2010年7月に成立した金融規制改革法(以下ドット・フランク法という)では、931条以下で規制が大幅に強化された。他方欧州では、欧州委員会が2009年4月に「格付会社に関する欧州議会および理事会規則」を制定し、規制強化が図られた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

現在アメリカにおける格付金融機関への規制を検討している。
アメリカでは、欧州やIOSCO以上に金融再規制に積極的であり、信用格付機関にもその形態(ビジネスモデル)自体検討する等、格付会社に対する不信感は想像以上に強い。以下本研究の締めくくりとして、格付会社に対する民事責任及び包括的なルックバックレビューを義務づけるべきか、検討することで今後の格付会社への規制を検討したい。

今後の研究の推進方策

今後は、欧州の規制動向及びIOSCOの規制動向を見ながら、民事責任及び勝手格付けへの規制について、比較法的に検討する。
また前述のように、アナリスト等の交代に関係なく、急激な格付の変更に関し、事後的に「なぜ格付を急激に見直さざるをえなかったのか」、一定以上の変更(たとえば数週間に3段階以上の変更)がある場合に、その基礎的事情の変化を記したルックバックレビューを格付会社に、自ら公表する義務を課すべきだろうか。恐らく信用格付会社によるルックバックレビューは、格付の制度を向上させるためには極めて有効ではないかと思われる。しかし前述した金商法21条の2のような特別規定を設け、投資家にとって民事責任を問いやすく制度改正し、さらに格付変更に対し事後的にルックバックレビューを法定化すると、格付会社の過失も容易に認定され、民事責任が認められやすくなるだろう。この場合、はたして信用格付会社はそのような大きな民事責任を負担できるだろうか。その結果わが国には、信用格付会社の登録がなくなるか、ひいていは民間の格付会社がいなくなってしまう可能性もあるだろう。この場合、アメリカでこれから検討されるように、格付会社のビジネスモデルそのものも再検討する余地があろう。

次年度の研究費の使用計画

主に欧州格付機関への規制を検討する。欧州では、2009年4月に格付会社監督規則が成立し、欧州市場監督機構(ESMA)に2011年1月1日より域内の全ての格付会社の監督権限が集中している。2012年1月現在ESMAに加盟している格付会社は、29社であり、イギリス系6社、ドイツ系8社(ムーディーズ等の現地法人を含む)などが登録している。このうち、日本企業である日本格付研究所(JCR)のみ現地法人がないため、証明(certified)となっているが、具体的規制状況を欧州議会の動向に着目して研究する。

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公開日: 2014-07-24  

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